ただただ、普通に用を足す
僕は自宅でくつろいでいる時、便意を感じ、トイレに向かった。
「お手洗」と書かれた照明のスイッチ、「換気扇 遅れて切れる」と書かれた換気扇のスイッチを立て続けに押す。カチッ、カチッと小気味良い打鍵感が連続して返ってくる。
木製の、やや暗く落ち着いたブラウン色のドアを開け中に入ると、暖色系のLED照明に照らされた1畳ほどのトイレ空間が広がっている。
白いタイル調の床と白い壁紙は清潔感を感じさせ、吊り戸棚は、トイレのドアと同じブラウン色で引き締まったイメージを与える。左側には温水便座の操作パネルとトイレットペーパーホルダー、右側には手洗いカウンターが備え付けられている。
そして中央には、温水便座付きのタンクレストイレが設置されている。
住んで間もない新築マンションのトイレで、便器側面の陶器が、ツヤツヤと輝いて床面を映し出している。
蓋を開け、身体の向きを変え、ズボンと下着を降ろし、便座に座った。
それと同時に、自動脱臭機能が作動し始めた。
全身の力を1カ所に集中させ、ぐっと力む。排泄口を徐々に広げながら、固まりかけた粘土のような感触のものがゆっくりと出てくる。
身体の血液が鬱滞し、頭部への血液循環も悪くなる。次第に目の前にチカチカと星のようなものが見え、頭がぼうっとし始めた。
排泄口を狭め、絞りを効かすと、切れた粘土が落下する。河原に石を落としたような音が響いた。
止めていた息を吐き出し、「ふう」とひと息つく。
その安堵感からか、今度は尿が出る。締め忘れた蛇口から出る水のように、勢いのない尿が少量。
尿を出し終えると再び、排泄口を広げ、残りの便を出し切る。
操作パネルに手を伸ばし、「おしり」を押す。
ノズルから勢いよく飛ばされた水は、迷うことなく自分のそれにヒットする。
水流の強さ、位置ともに自分用に調整されており、気持ちいい。
さらに「ムーブ」ボタンを押し、水流を上下に振動させる。
この上ない至福の時が訪れる。ああ。なんて気持ちいいのだろう。まるで心まで洗われていくようだ。目をつむり、しばらくこの時を楽しんだ。
トイレットペーパーを引き出し、数回軽く拭く。立ち上がり、下着とズボンを上げ、「大」ボタンを押す。大きな水の渦を作り、排泄物は消えていった。
トイレの蓋を閉め、手洗いカウンターで手を洗い、タオルで手を拭き、トイレから出た。
「お手洗」というボタンを押し、照明を消し、部屋に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます