やんごとない奴らのやんごとない生活。
ムー
第1章 集いし者達
第1章第1話 クエスト1冒険者になろう
ここは魔法と剣の世界。 そこらかしこに魔物が溢れかえり、ダンジョンや、様々な天候地形の場所に住みついている。
空にはドラゴンが 海には大きな蛇のような魔物が 地には無数の獣型の魔物が。魔王や天使、神なんてのもいる世界。人族は魔族と争い互いを滅ぼさんとし、そして一獲千金を目指し数多の冒険者が討伐、探索へとむかい、依頼を受ける。
そんな魑魅魍魎、群雄割拠、弱肉強食のこの世界、とある町で、また新たな冒険者が生まれようとしていた。
「おぉ、ここがギルドかぁ! 初めて来たぜ!
俺もこれから冒険と戦いの日々に身を置くんだなぁ。くぅー、ドキドキしてきた〜!」
俺の名前はメルと名乗っておこう。俺はいま、始まりの町デイズに来ている。デイズとは、日が出ずる町という意味らしい。
どんな凄腕の冒険者も大抵このデイズからスタートをして、レベルを上げるので始まりの町と呼ばれている。英雄と呼ばれた人物たちも皆ここから巣立って行った。
あぁ俺もそうなると思うとワクワクが止まらない。
両親は過保護で外に一人で出歩くことさえ許してくれなかったのでこっそり家を出てきた。寝泊まりは宿屋に泊まればいいし、その日暮らしってのも悪くないよな。
それにしても母さんも父さんも、おれはもう15歳なんだから子離れしてほしい。
さて!気を取り直して今日から俺も冒険者だ!
別に有名になっても構わんのだろう?
意気揚々とギルドのドアを開け中に入り、キョロキョロとあたりを見渡してみる
思ったより人は少ないが昼なのでもう仕事でもしているんだろうか。中には数人の冒険者とギルドの人と思しき人しかいない。
話は聞いていたがここがギルドかぁ。
酒場?みたいなのが付いていて飲み食いもできそうだ。
さっそくギルドに登録しようかね。
「こんにちは、冒険者になりたいんだけど」
金髪を後ろで纏めてポニーテイルのようにしている露出が少し多めの、受付嬢らしき人に言うと
「はい、ではお名前と職業をお願いします。」
と紙を渡された。
「こちらは後でステータスプレートへと反映するものなので、虚偽のないようお願いします。また虚偽の申請をした場合、罰則がございますのでお気をつけください。」
「あぁ、はい、わかりました。」
ステータスプレートは、冒険者の身分証のようなものだ。
これがあるといろんな国に出入りできたり、色々特典があるんだが、その分偽造とかその辺には厳しい。
だが抜け道があるのも確かで、その辺をどーするかなぁとぼんやり考えていると
「おいおい、兄ちゃん、そんな若えのに冒険者になんのか?やめとけやめとけ、すぐくたばっちまうよ」
隣の酒場で飲んでいた モヒカンヘッドのいかついおっさんに絡まれた
これが噂に聞くテンプレってやつか?
ギルドに登録すると絡まれるとか、旅に出ると誰かが襲われている場面に出くわすとかいう、
「いや、悪いがやめるつもりはないぞ、冒険者になるのは夢だったんだ。」
「けっ、冒険者が夢ときた。これはまた活きのいい若者が来たもんだなぁ、せいぜい長生きしろよ」
と言い酒を飲む。
なんだ、めんどくさい奴じゃなくて心配してくれるいい奴じゃないか。おっさんのツンデレは誰得だが。
そう思って呆けていると
「彼、悪い人じゃないのよ。君ぐらいの子を見るとつい心配になっちゃうのよ。子持ちだから。 悪く思わないであげて。」
と受付嬢に、苦笑しながら言われた。
思ったより優しいなギルドとは。つかあのおっさん子持ちかよ。世も末だな。なんであんないかついおっさんに奥さんがいて俺には彼女の一人もいないんだ。
チクショウ滅べ、リア充。
と心の中にで破滅の呪文を唱えながらも紙に氏名メルファリア、職業召喚士と必要事項を書き終える。
「あら!召喚士とは珍しいですね。では最後にこの魔水晶に触れてください、魔力を記録しますので。」
と言われ、水晶に手を触れる
水晶がまばゆく光り、登録が完了する。
古代の叡智の結晶らしいが、その技術はギルドの情報網や解析能力を持ってしても不明らしい。だか少しずつ技術は進歩してるのだとか。
「ではこちらがギルドカードとなります、紛失すると50000レムかかるので気をつけてくださいね、あ!申し遅れました。私の名前はレナと言います。これからよろしくお願いしますね。冒険者ギルドは、メルファリアさんのご活躍をお祈りしています!」
両手を胸の前で拳を握りレナさんが期待をするような目で告げる。そしてたわわなアレがぷるんと。
「ありがとうございますっ!頑張ります!」
そしてご馳走様ですっ。
と健闘の言葉をもらい、カウンターを離れる。ちなみにレムはお金の単位で3人家族の1月の生活費が200000レムくらいだろう。
じゃあさっそく依頼でも受けますか!
クエストボードにて手頃なクエストを探していると、高位クエストはドクロマークがたくさん並んでいる。報酬も高いがそれだけ難易度も高いのだろう。失敗が多いみたいだ。
まぁ流石にすぐそんなクエストは受けられないのでフログビー討伐を選ぶ。
フログビーは大きいが、ゴブリン等と違って群れないので初心者でも狩やすいらしい。
食用にもなっていて鶏肉みたいである。
「あの、フログビー討伐を受けたいんですが」
「お一人で大丈夫ですか?あまり無理をしないでくださいね、雑用の依頼とかもあるので。」
せっかく冒険者になったのに雑用はいやです。
渋る受付嬢を押し切り、何とか受注してもらい、いざ討伐へ出かける。草原なので見晴らしも良く奇襲などの心配もないと思う。
町を離れ少し歩いているとカエルのような緑色の魔物がいた。あれがフログビーだ。本で見たよりも小さいサイズのようで大きさは人の背丈くらい…かな?
武器は剣一つだが何とかなるだろう群れでもなく単体のようだしな。
ふははは、お前は俺の英雄譚の第一歩、礎となるのだ、散れ!カエルめ!人様の糧となるのだ!
こっそりと近づき背後を取る。そして、魔法で先制攻撃を仕掛けることにした。
俺は召喚士だけど、まだ何もテイムしてないので召喚はできない。それに召喚士は少ないから師事もなかなかしてもらえない。かろうじて文献がある程度だ。なので俺は少しの魔法と剣術、弓術などなど広く浅く色々なものを習得していた。本職には劣るけどな。
「ファイヤボール!」
人の頭サイズの火の玉が形作られフログビーに向かっていく。当たればかなりのダメージになるはず。ワンチャン倒せないかな?
そして今まさにカエルにぶつかり「ボゴッ」弾ける! はじける?
あれ?俺の目が確かなら、火の玉がぶつかる瞬間地面から大きな何かが出てきた。
そしてそこに当たって火の玉はあっという間に霧散してしまった。
「ゲゲロ、」
ボコボコッとさらに土煙と共に這い出てくるなにか。あれこれでっかい。思ったよりでっかい。なんか良くない感じがするほどでっかい。
土から這い出てきたのはそれは大きなカエルだった。
そうフログビーだと思っていたのはフログビーの子どもだったのだ。
親ガエルはこちらをじーっと見つめてくる。
でかいなぁ。俺の身長の3〜4倍があるんじゃないかと思う。世の中の冒険者はこれを単騎で倒すのか。押し潰されただけで死にそうじゃね?と現実逃避をしていると
「ゲロッゲロッ」
ドスンドスンとゆっくりとこちらに近づいてくる。
「いやぁカワイイ子供さんですねぇ!つい魔法撃ちたくなっちゃいますよ」
なんとかしなくちゃと笑顔で話しかける俺であるが
「ゲロゲロロロ」
返ってきたのは返事ではなく、舌による攻撃であった。
「でっすよねぇぇぇ!」
あれから走り回り剣を振り回し魔法を打ち、がむしゃらになりながらもなんとかカエル親子を討伐した。
合わせて5000レムになったが、宿代と飯代、回復アイテムの補充などですぐになくなってしまう。
「あぁ、命がけなのに金がすぐ無くなる。冒険者は厳しいぜ・・・」
ギルド付属の酒場で、エールとフログビーの唐揚げを食べているが、美味いなこれ。あのカエル野郎もなかなかやるじゃない。
しかしこれじゃいけないな。いつ死ぬか分からない世の中だ、こんな綱渡りをしていたらすぐ死んじゃう。
英雄なんて夢のまた夢だ、やはり仲間がいる。
「よし、思い立ったら吉日!仲間募集しよう!」
レナさんのところへ行き依頼を出す。
「はい、確かに受領しました。ここは駆け出しの街ですからすぐにお仲間が集まるかと思います!数日ほどで面会する人が現れるかと」
「ありがとうございます。やっぱりソロで冒険者する人は少ないんですかね?」
「そうですねぇ、死のリスクを減らすためにも普通はパーティを組む人が多いですね。」
「そうなんですか…俺でも組めますかね…?」
「大丈夫だと思いますよ?誰でも最初は初心者なんですから実力とかに問題視する人もいないと思いますし、頑張ってみてください」
レナさんの励ましを受けて、俺はカウンターを離れる。
特に望むものはないが向上志向のある人と、弱い俺でも大丈夫な人と条件をつけておいた。
可愛い女の子だといいなぁ、チンピラみたいなやつではないことを祈る。
その後、銭湯に行くことにした。
お風呂は上流階級しか持てないらしく宿屋にも風呂はない。なので民衆は共通浴場でお金を払ってお風呂、もとい共通浴場に入る。
「くぁ〜」
今日の疲れが取れるかのようだ。お風呂のありがたみを感じる。
宿屋で軽くご飯をたべ、
部屋で将来のことを考えていた。はやく
一軒家を持てるような冒険者になりたいなとか、明日誰か張り紙を見て来てくれる人がいるかな、などと期待に胸を膨らませながらその日は眠りについた。
次の日、食事を済ませた俺は朝早くからギルドでパーティ参加者を待っていた。
すると 後ろから不意に声をかけられた。
「貴方様が依頼の主でしょうか、依頼を見てきたのですが。」
おお、まさか、来てくれたのか。
正直一人ではきつかったので、どんな人であろうと、パーティを組んでくれるのはありがたい。
たとえオーク、豚の魔物でゴブリンと並んで嫌なモンスター、であっても快く迎よく…いや、オークはちょっと嫌だな…せめてモヒカンのおっさんくらいの見た目であってください。いや、そんなことより性格の方が大事か?
そんなことを考えながら振り返ると・・・
白銀の髪を持つメイドさんが立っていた。
肌は白く、スタイルも良く、背も高い、一国の王女と言われても違和感はない。いやまぁメイド服着てるんですけど…
何より目を引くのは白銀の髪だ。光に照らされ光沢を放つそんな髪だ。この容姿に見惚れてしまい。俺は声を返せなかった。
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