第2話 憧れ幻想2

「…はぁ はぁ…もう無理…委員長 歩こう」


「まったく仕方無いですね まぁいいです もう遅刻の心配も無いですから」


「え?」


よく周りを見ると騒音が大きくなり 人混みが増殖していってる

ここが…私立虹彩学園 超エリートや特別な才能を持った高校生が集まるのでは無く 普通の私立高校…ただ生徒数が異常なのでお金があって問題さえ起こさなければ誰でも入れる…と言われている


「あれぇ 里谷(さとや)じゃん 久し振り」


振り返すとそこには茶髪のチャラそうな男が一人


「優一(ゆういち)…?」


「どうしたの?中学振りじゃん あっ もしかして編入生って里谷のこと?」


「あっ…うん まぁ …一応」


「っていうか大丈夫だったの?学校来なくなったの病気だったからって聞いたけど」


「あぁ…うん もう大丈夫 完治したよ」


「そっか…」


気まずそうに頰を掻く優一…本当に雰囲気変わったなぁ…茶髪だし


「里谷くん今の話って…」


俺は委員長の言葉にしばらく反応しなかった…いや 出来なかった


「里谷くん…?」


周りの空気は一気に変わり注目が一人に集まる まるでスポットライトを浴びている少女は綺麗な黒髪を揺らし堂々と正門から校舎の方に歩いていく


「…ッ⁉︎」


驚愕したという以外の表現が思いつかない


「里谷…?…おーい どうした?」


優一も委員長も心配の目を向けるがそれどころでは無い


「…優一 あいつって…」


俺は無言で彼女に目線を送る 優一もそれを察する


「佐々木 鏡夏(ささき きょうか)成績は常に上位で超が付くほどの高スペックだから男女共に人気が高い」


おっと予想以上の詳しい説明 しかも説明口調…ちょっと引いたけどちゃんと確証は取れたため少し落ち着きいつものペースに戻す


「詳しい説明ありがとう」


「おう!任せとけ」


一応皮肉を混じらせたが優一はそんなこと気づく様子も無く 自信満々の笑みだ


「どうして佐々木さんのことを?」


「え?…えーと…」


急な委員長の疑問に答えられず言葉に詰まる


「どうしてですか?もしかして美人さんだから見惚れてたのですか?」


「…」


「どうしてですか?」


質問責めに全く言葉が出て来ない もちろん見惚れてた以外にちゃんとした理由があるがそれはあまり話したく無い

だから…出来るだけ怪しまれない様に…


「なっ…」


「な?」


「なんとなく…かな」


ばっかぁぁぁあ 俺は馬鹿なのか 絶対怪しまれるやつじゃんツッコミの時はめっちゃ頭回るのにこういう時に限ってぇぇ


「なんとなく…ですか そうですか 分かりました」


「え?…今ので良いの?」


「はい 良いですよ 理解できたので」


「良いのかよっ!」


「へ?」


やばっ せっかく怪しまれなかったのに思わずツッコんでしまった…だから嫌なんだよぉ この癖!


「ぷっ あはは 面白れぇな二人とも」


振り向くとそこには優一が笑い転げている 今ので大爆笑って こっちからしたらただの変な人だけど…


「はて?今のどこが面白かったのでしょう…」


委員長は委員長で理解して無さ過ぎだ ほぼ無表情で考えてること分かんないし…


「それより委員長 里谷を職員室まで連れて行かなくていいの?そろそろ時間だけど…」


優一の言葉を聞いて 気づけば周りはかなり人が減っている


「そうですね そろそろ行きましょうか 里谷くん」


そう言った委員長はすでに歩き出している マイペースなんだなぁと子を見る親の気持ちで少し微笑ましくなる…人の話を聞かないのはちょっと論外だけど


「じゃあまた後で」


優一に告げると「あぁ」と微笑で返してくれる なんか風当たりが良くなったな優一… 俺はそんな事を思いつつ心に佐々木 鏡夏という小さなしこりを残して委員長に小走りで追いつく

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