02話 天球儀ラジオ
「それで? 付き合うことになったの?」
すっとんきょうな声にルコが慌てて手を振る。
「べ、別に付き合うとかじゃ」
「でも、次のデートも約束したんでしょ?」
デート。その言葉に顔が真っ赤になったのだろう。親友ユッカはおかしそうに肩をゆすって笑った。
「ほら、立派なお付き合いじゃない」
ルコは困惑の表情のまま溜息をつく。明るい光に満ちた学校の廊下。窓からは疑似天蓋の青が静かに揺らめいてる。
「やっぱり、開放エリアに誘ってよかったわ。ほら、お家を出たおかげで思いがけない出会いがあったじゃない」
そう言われれば頷くしかない。ユッカのような親しい友に誘われなければ、自分の部屋を出ることはない。だけど、今回はユッカが来れなくなったためにひとりで外の世界を自分の足で歩むことができた。大きな進化と言える。
「ふだんは光学通話ヴィジフォンしてるの?」
「ううん。Bクラスとはヴィジフォン使えないの。ほら、時差・・があるから」
移民船GET2のふたつの居住船、AクラスとBクラスに流れる時間は2倍もの差がある。ユッカは思わずぽかんと口を開く。
「じゃあ、どうやってコミュニケーション取ってるの?」
「文字だけのチャット。それもけっこうタイムラグがあるけどね。一度ヴィジフォン使ったらノイズがひどくって」
「ふぅん」
ユッカは鼻を鳴らすとじっとルコの瞳をのぞきこんだ。
「写真は?」
言われて顔を横に振るルコに畳みかける。
「じゃあ、次のデートで撮ってきてね」
「えっ、そんな」
「次はどこへ行くの?」
どういうわけか楽しそうに尋ねてくるユッカに戸惑いながら、ルコは「水族館」とつぶやいた。
「わーっ……!」
星空を背景に悠々と舞う魚たち。開放エリアから見える宇宙空間の映像を巨大水槽に映し出すことで、魚たちが宇宙を舞い遊ぶ姿を眺めることができる。
開放エリアの水族館は施設の壁面全体が水槽となっており、そこへさまざまな魚が放されている。水槽を無防備な表情で見上げるルコの隣で、にこにこと微笑むラタオの姿があった。
「すごい、あれ、キラキラしてる」
「そうだね」
鱗全体が金属のような光沢を光らせながらゆらゆらと泳いでいく魚を指で追う。
「宇宙を飛んでるみたい……。すごい……」
口を半開きにして水槽を見上げるルコに、ラタオが笑いながら煙草のスティックをくわえる。
「よかった。絶対ルコちゃん気に入ると思ったんだ」
「ありがとう、ラタオさん」
そう言って振り返るが、くわえ煙草の姿に口をつぐむ。
「お昼はさ、人気のカフェがあるんだけど、行ってみる?」
「はい」
水族館を心ゆくまで堪能してから、ふたりはカフェに向かった。
小川に見立てた水路に面した静かなカフェ。2階のベランダで料理を待つその間、唇からスティックを離さないラタオをまじまじと見つめる。さすがにその視線に気づいたラタオがスティックをつまみ上げる。
「ごめん、臭う?」
それには顔を横に振る。が、不思議そうに首を傾げる。
「どうして煙草を吸うんですか?」
思いがけない問いにラタオは目を丸くする。そして、うーんと唸りながら額に手をやる。
「そうだねぇ……、なんて言えばいいのかな……」
しばし黙り込んでから、ラタオは頭を掻いた。
「ルコちゃんはさ、紅茶好きでしょ?」
「はい」
「なんで?」
言われて首を傾げる。
「……わかんない」
「それと、同じだと思う」
そんなやり取りをしているうちに料理が運ばれてくる。独特な香辛料がふんだんに使われた麺料理。「いただきます」と言うと豪快に食べ始めるラタオ。その食べっぷりにルコは思わず微笑むと自分もフォークを取る。麺をからめ、口に含むとこってりとしたたれの旨みが広がる。
「美味しい」
「良かった。当たりだったね、ここ」
グラスの水で喉を潤して、ルコは再び尋ねた。
「煙草って美味しいんですか?」
「まぁ、色々味の種類があるしね。吸ったら気分がすっきりするんだ」
水蒸気で? そう言いたげな顔つきのルコにラタオは苦笑を漏らす。
「体にいいわけでもないし、ルコちゃんは大人になっても吸っちゃ駄目だよ」
体に悪いことでもやってしまうのが大人になるということなのか。ルコはどこか不満げに麺をすすった。
「次はさ」
口を紙ナプキンで拭いながらラタオが身を乗り出す。
「宇宙の切り出しに行かない?」
その耳なじみのない言葉にルコは一瞬動きを止めた。そして、目を瞬かせる。
「宇宙の……、切り出し?」
いつにも増して幼い表情で聞き返すルコにラタオは嬉しそうに笑う。
「天文台のミュージアムショップで売られている人気グッズなんだってさ。おもしろそうだから行ってみない?」
言われるままに頷く。
そんなわけで、ふたりはカフェを出ると天文台へ向かった。開放エリアでも上層に位置するここは、誰でも自由に宇宙空間を観測することができる。
「中学生まで無料だってさ」
チケットを手に微笑むラタオに、ルコはちょっとだけ複雑な気持ちになる。自分はどれだけ子どもだと思われているのだろう。
「この間のプラネタリウムはもうすっかり娯楽施設だからね。こっちはどっちかというと学習施設だから」
プラネタリウムよりはこぢんまりとした天文台には、家族づれが多く集まっていた。円形の室内にたくさんの望遠鏡が据えられ、自由に使うことができる。が、ほとんどの人たちが職員と共に望遠鏡をのぞき込んでいる。その様子を眺めていると、ラタオが女性職員のひとりに声をかける。
「あ、すいません。宇宙の切り出しできますか」
「はい」
職員はにっこりと笑って空いている望遠鏡を指差す。
「あちらで切り出しましょう」
職員に先導されるラタオの後を小走りについてゆく。
「まずは、この望遠鏡で宇宙の天体を観察なさってください。そして、気に入った風景が見つかったらお声かけください」
施設の上空へ向かって据え付けられた巨大な筒状の望遠鏡。ラタオが先に見るよう促す。ルコは恐る恐る椅子に座ると、レンズに顔を寄せる。
最初目に入ったのは、真っ暗な闇だった。やがて目が慣れてくると、小さな白い輝点があちらこちらに散らばっているのがわかる。が、職員が調整ハンドルを動かした瞬間。不意に青い光の広がりが溢れた。
「あっ!」
「見えた?」
ラタオの声に頷く。
「すごい! 渦みたいのが!」
「オリオン大星雲です」
職員の言葉にラタオがへぇっと声を上げる。レンズから見える風景が少しずつ移動されると、全体像が見えてくる。青い光は濃い紫へと変わり、やがて白い光へと収束してゆく。まるで色の光に満ちた水の流れのようだ。
「綺麗……」
うっとりとしたような声を漏らし、目の前で繰り広げられる色の洪水を見つめる。そんなルコを、まるで兄か父親のような表情で見守っていたラタオは、望遠鏡の操作をしている職員に話しかけた。
「地球は見れないんですか」
「あ、地球は――」
急にトーンを下げた声色にルコが顔を上げる。女性職員は少し残念そうな表情で答えた。
「地球を観測することは許可されていないんです。テロ対策で」
予想もしていない言葉にルコもラタオも声を失った。
人類が別の惑星への移住のために移民船GET2で旅立ったのがおよそ百年前。GET2に乗りこんだ人類は5百万人。当時地球には7億人の人々が残されたが、今では百万人を切っているという。
「地球とは今でも定期的に交信し、場合によっては援助物資を輸送していますが、それを移民政府の負担になるとして地球を廃棄しようとする動きがあるんです」
職員は声を落とすと続けた。
「そのため、地球に攻撃を加えようとする人々もいるようなんです。だから……、観測は禁じられています」
ルコは青い顔でラタオを見上げた。彼も、まさかこんな話を聞かされるとは思わなかったのだろう。少しうろたえた表情で見つめ返してくる。職員は寂しそうに独り言のようにつぶやいた。
「地球は私たちの故郷ですから。なんとかして残すべきだと思うんですけど……」
移住を目指して百年。ルコたちにとって、地球といえば液晶モニターの中で見る映像でしか記憶にない。移民政府はことあるごとに「故郷地球と同じぐらい豊かな惑星を探そう」「地球での記憶を忘れず、宇宙を開拓しよう」とスローガンを飛ばしているが、それは心からの言葉なのだろうか。
思わず黙り込んだ3人だったが、職員が慌てて笑顔を作る。
「すみません、余計な話でしたね。では、さっそく宇宙の切り出しをしましょうか!」
そうだ。そもそも宇宙の切り出しをするためにここへ来たのだ。ラタオも気を取り直した様子で頷く。
「ルコちゃん、気に入った風景探してごらん」
「どういうこと?」
切り出しについて何も知らないルコが戸惑いの声を上げ、職員が身を屈めて語りかける。
「気に入った風景を選んで、それをオブジェとして加工するサービスなんです」
オブジェに加工? ルコは慌ててレンズをのぞき込む。
「え、どんな風景でも?」
「ええ。レンズから見える風景ならなんでも」
言われてハンドルを動かし、視野を変える。時折大きな惑星も見える。闇に浮かぶぼんやりとした茶色の惑星や、蒼くくすんだ天体。先ほどのような光を散りばめた星雲もいくつか現れた。だが、
「……さっきのが綺麗だったな」
「オリオン大星雲ですね」
職員がハンドルを回して再び色彩の広がりを探し出す。先ほどルコを驚かせた青と紫のグラデーションが映し出され、思わず微笑が浮かぶ。
「これ、これです」
「もうちょっと全体を映しましょうか」
星雲の全体像が視界に広がり、ルコは頷いた。
「はい、これです。これがいいです」
「では撮影しますね」
何度かシャッター音が響き、職員が手許の端末からレシートを出して手渡す。
「ミュージアムショップでこのレシートをお見せください。30分で出来上がります」
受け取ったラタオが望遠鏡を指差す。
「俺もちょっと見ていいですか」
「はい、どうぞ」
ルコと代わって椅子に座るとレンズをのぞき込む。
「へぇーっ、こんなにはっきり見えるんだ」
「すごいね」
「うん、これはすごいや」
ふたりはしばらく代わる代わるレンズをのぞいて美しい天体の姿を楽しんだ。だが、時折ハンドルが動かなくなる場所があり、おそらくその先は地球があるのだろうとふたりは語り合った。
「そろそろ出来たかな」
ラタオの言葉にふたりは観測室を出てミュージアムショップへ向かった。
「すいません、これ」
手渡したレシートを見たショップのスタッフが奥へ引っ込むと箱を手に戻ってくる。
「お待たせしました、こちらです」
わくわくしながら見守るルコの前で、スタッフが箱を開けて黒い何かを取り出す。
「あ……、あ、すごいっ」
片手で乗り切らないほどの台形の黒い塊。まるで地面から「切り出した」ような黒い塊の内部に美しいオリオン大星雲の色彩が閉じ込められている。
「本当に、本当にあのままだ!」
歓喜の声を上げるルコに満足そうな表情で見守るラタオ。
「これ、どうやって作ってるんですか?」
ルコの言葉に、スタッフがどこか得意げな表情で説明をする。
「透明度の高い樹脂の内部にレーザーで彫刻し、特殊加工してあります」
「へぇ……」
樹脂を持ち上げ、様々な角度から眺める。
「地球では地表から鉱物や氷を切り出す技術があったそうです。そのため、このサービスを『宇宙の切り出し』と名付けたんです」
台形の内側では星雲の美しい色彩が優雅に広がり、たしかに宇宙空間を切り取ったような感覚に囚われる。まるで芸術家の作品のようだ。
「気に入った?」
ラタオに呼びかけられ、大きく頷く。
「すごい……、こんなのがあるなんて」
まだ半ば呆然とした様子で切り出しを見つめるルコに笑いかけると、ラタオは財布を手にスタッフに向き直る。
「いくらでしたっけ」
「300SGです」
金額を聞いてルコがはっと我に返る。
「ラタオさん、お代金――」
「いいよいいよ」
さっさと支払いをすませると手提げ袋にしまい、ルコに手渡す。
「俺は働いてるからさ」
そう言ってエントランスに向かうラタオを心配そうに見上げる。
「でも、いつも出してもらってばかりじゃ悪いです」
振り返ったラタオは、ルコの真剣な表情に困ったように笑った。
「じゃあ、帰りのモノレール代を出してもらおうかな」
その言葉にルコの表情がぱっと明るくなり、嬉しそうにポーチから財布を取り出す。
「律儀だね、ルコちゃん」
「だって。この間も今回も、楽しいところにつれていってもらったし」
ふたりはモノレールに乗り込むと軌道エレベータのゲートステーションに向かった。宇宙の切り出しが入った手提げ袋を眺めながらルコが不思議そうに語りかける。
「ラタオさんって本当に開放エリアにくわしいんですね。いろんなこと知ってる」
「よく来るからね、仕事もあるし」
そう言ってから、ああ、と言葉を継ぐ。
「それに、今回の宇宙の切り出しはラジオで知ったんだ」
「ラジオ?」
ポケットから携帯端末を取り出すと画面を見せる。
「……天球儀ラジオ?」
画面には、歯車を模した飾り枠に〈天球儀ラジオ〉とあり、放送の日時が記されている。
「聞いたことない? AクラスでもBクラスでも大人気のプログラムだよ」
ルコは少し戸惑いながら首を振る。
「ラジオって……、なんだか大人の聞くものみたいな気がして……」
「ああ、特にAクラスじゃ深夜放送になるもんな」
ラタオは端末の画面に触れると番組で紹介されたものをまとめたページを見せた。
「AクラスとBクラスそれぞれの話題を紹介しているし、開放エリアの情報もある。でも、俺が一番気に入っているのは地球の文明を紹介しているコーナーだね」
先ほど話題になったばかりの地球。ルコは目を見開いた。
「地球でかつて歌われていた歌とか、書かれた本とかを紹介しているんだけど、本当におもしろくてね。あの番組で紹介された作品はその週のダウンロードランキングにかならず食い込むんだ」
「ふぅん」
力説していたラタオは、そこで急に寂しそうに顔を曇らせた。
「だから……、俺けっこう地球の古い文化が好きだからさ、さっきの話はちょっとショックだったよ」
たしかに、ルコも学校では故郷地球を大事な存在として教えられてきた。それを邪魔なお荷物のように考える人がいるなんて。
「とにかく、ルコちゃんも天球儀ラジオ聞いてみたらいいよ。ユェンっていうパーソナリティーの語りも良くてね。はまると思うよ」
「聞いてみます」
力強く答えるルコに、ラタオは「寝坊しないようにね」と付け加えるのを忘れなかった。
「ついつい聞き込んじゃうからさ」
「はい」
笑いながら答えるルコ。そして、そろそろゲートステーションに到着するとアナウンスが流れる。窓を流れる風景にちらりと目をやってから、ラタオはちょっと心配そうにルコを見下ろした。
「……あのさ、ルコちゃん。もしよかったら、また……」
その言葉に思わずはにかむ。そして、恥ずかしそうに頷くルコにラタオはほっと安堵の笑顔を見せる。
「じゃあ、また。次の開放日に」
その日の晩。宿題を終わらせてからもルコは本を読むなどして時間をつぶしていた。あとちょっとで天球儀ラジオが始まる。この番組を聞けば、ちょっと大人になれるかもしれない。なにより、ラタオの人となりがわかるような気がした。と、パソコンのモニターが自動的に起動する。
「始まった」
ベッドに寝そべっていたルコはいそいそと机に向かった。軽快な音楽が流れる中、女性の声が始まりを告げる。
「Aクラスの方はこんばんは。Bクラスの方はこんにちは。天球儀ラジオの時間です。ご一緒させていただきますのは、私ユェンです。今日も最後までお付き合いください」
快活で、それでいて落ち着きをもった女性の声。流れるような語りで曲を紹介してゆく。
「今日の始まりの一曲は、今週Bクラスで発表されたアルジェント・ネブロサの新曲、『パラレル・ラインズ』です。疾走をやめないあなたに、ひと時の休息を届けるナンバー。ご自分の疲れに気づかないふり、していませんか?」
Bクラスで流れている楽曲など、今まで気に留めたことはなかった。ラタオの住んでいる場所で、この曲が流れている。そう思うと胸がどきどきしてくるのがわかった。
「今日、Aクラスでは気象スイッチが行われました。早いもので、今年ももう6月です。時の流れの速さに気を取られて、大事なこと、後回しにしていませんか? 私は日記を読み返して反省したところです」
GET2は巨大な宇宙船のため、完全な気象コントロールがなされており、惑星のような「季節」がない。だが、人間を含めた生物の生体リズムを保つため、数カ月ごとに気温や湿度の設定を変更している。それが「気象スイッチ」だ。
「毎日同じようなことの繰り返しだと感じていらっしゃる方は、ぜひ日記と一緒に日々の写真を撮ってみてください。私は時々読み返して今の自分が人生のどの位置にいるのか、確かめる時間をとっています。……とはいっても、自分を見つめ直すのって、言うほど簡単じゃないんですよね」
力強い言葉があったかと思うと、弱さを共有しているかのような言葉も漏れ、ユェンの一言一言がルコの胸に刻み込まれてゆく。クラスを越えて人気を得ているのがわかった気がした。
「そして、Bクラスでは4月にオープンした大人気のショッピングモール、『Bポイント』でセールが始まったようですね。Bクラスのみなさんから耳より情報をお待ちしています」
そこまで聞き入っていたルコは、はっとした。そうだ。Bクラスは今、7月だ。今、ここは6月でも。彼女は椅子から立ち上がると壁のカレンダーを見つめた。次の開放日はAクラス時間では7月25日。あと30日。ラタオは、あと60日。
翌日。ルコは学校の帰り道に雑貨屋へ立ち寄った。
「すみません、デジタルの時計はありますか」
ルコの言葉に、店員は時計コーナーを案内した。シンプルなものから奇抜なデザインのものまで、さまざまな時計が時を刻んでいる。その中から、ルコは黒くて細長い時計を手に取った。カレンダーと時計が一体化した見やすい時計だ。ルコはそれを持ってレジへ向かった。
「これ、同じものをふたつください」
同じ時計をふたつ買い求めたルコは帰宅するとそのまま自分の部屋にこもった。先ほど買ったばかりの時計を箱から取り出す。時計の電源を入れると最初に設定画面が表示される。ひとつはAクラス時間に。そしてもうひとつは、Bクラス時間。
Aクラス時間、6月26日、午後5時32分。
Bクラス時間、7月26日、午前7時32分。
かちん。と音を立てて分の表示が変わる。この1分が2分になる。ルコは、眉をひそめた。そして小さく息をつくと、ふたつの時計の間に宇宙から切り出されたオリオン大星雲を置く。真っ黒なインクにしたたるように広がる美しい青と紫のグラデーション。
今日、百科事典で調べたのだ。オリオン大星雲はこのGET2から1300光年も離れている。AクラスとBクラスは、450km。
たった、450km。
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