How to make a box
雨音
第1話
何かを忘れちゃった……
何かを忘れちゃった……
思いださなちゃ……でも、なんだっけ?
誰だっけ誰だっけ
誰を探してるんだっけ……?
僕は、今誰を探してるんだっけ?
霧が立ち込めるこの世界じゃ何もかもが白い煙と共に溶け込み消えていってしまう。
【鳥頭の老人】
【軟体動物の人】
【異形の人】
誰だっけ、思い出せない。
それとも僕は、
もしかして誰も探してないのかな
探さなくちゃいけない。
誰かに会わなくちゃ……
見つけないと……でも、誰を探してるのか全くわからない。
探し人、探し人。
霧の中に忘れてきちゃった、僕の『大切な人』思い出せない、思い出せない。
僕の『大切な人』はやく、はやく、見つけなくちゃ独りぼっちは悲しい独りぼっちは寂しい。
悲しいよ。
ねぇ、何処にいるの?
何処にいるの?
僕は、ここにいるよ、君は何処?
本当にいるはずだ。
思い出せないだけ、きっといる。
わからないわからないよ、どうしようどうしよう。
霧で前が見えないよ、この世界じゃ見つけられないよ君を忘れたくないのに何処かに忘れてきちゃった。
思い出せ、思い出せ
君を探して見せる。
見つけて見せる。
この霧が立ち込める異形の住人だらけのカラクリの世界から、きっと必ず見つけて見せる。
君を見つける、君を絶対に思い出す。
****
そうして僕は、大切だった『誰か』を探す。
****
なにもわからないまま……
生まれてから、この10年間霧と周りのガスの煙が辺り一面を覆い隠しできていた都市があった。
ここでは、何もかもが作り物だ、草木も花も何もかもが代わりの鉄のカラクリできており全てが嘘の塊だ。
動物だって、本物を見たことがない。
猫もねじ巻きのおもちゃ、鳥はインテリアのような錆び付いた置物だ。
地面は、本物の土ではなく全てがコンクリートで火傷をするほどではないがどこを歩いても熱があり、時々割れ目から蒸気が吹き出し霧をさらに濃くしていた。
僕?
僕の名前はない。
家族も勿論いない。
気づいたら、僕一人で、人気のない廃墟のベンチの上で寝ていた、アスファルトの割れ目から熱気の籠った蒸気が吹き出し独特の鉄や水臭さがあったことは今も変わらず覚えている。
思い出そうとしても記憶も曖昧でよく思い出せない。
辺りを見渡しても何もなくただ白く濁った霧が僕の探していたものを隠してしまった。
そんな気がした。
昔は、両目共に見えていたでも今は片目しかないなんでだろう。
そのせいで何も見えない。
いつも夢の中で誰かが僕に話しかけるんだそれはきっと記憶の一部なんだろう。
でも、顔を思い出そうとすると、そこでいつも目が覚める、そして何度も涙を流していた。
意識のない涙は、ただ冷たく頬を濡らすだけの鬱陶しい雫でしかない、ファーの付いたコートの袖で雫を拭い今日も僕は、静かな偽物の町を歩いて行く。
全てガラクタによって埋められ先に進むことを拒んでいるようだった。
ここから先は来るなと言われているような気がするほどに先に進めるはずの道は、大量の鉄の塊で埋められていた。
それでも僕は、この先の町にいなかなくちゃいけない気がした、ここには誰もいないのだから、この先にいかなくてはいけないのにどうして塞がっているのか不思議だった。
同じ都市なのにどうして隔離された場所がありそして鉄屑だらけでまるでゴミ捨て場だ。
ひたすら毎日毎日ガラクタを掻き分け道を開けて進んだ。
終わりが見えなくても怖いと言うことがなかった。
それだけの自信があるのかそれは何も言えないがただこの先には何かあるそんな気がしていた。
『さがしもの……さがしもの、どこだろう
きょうもみつからないの。
みつからないの』
独り言を呟きながら、目についたガラクタを掻き分け詮索していると、誰かに声をかけられた。
後ろを見ても誰もいない、気にしない方がいいと僕は、ガラクタを放り投げ積み上げられ塞がれていた道を直しているとまた声をかけられた。
だが誰もいない……目の前には鉄の塊のガラクタしかない。
伏せた状態の大きな耳をピーンと尖らせ耳を澄ませると確かに声が聞こえた。
それは、僕がいるちょうど真下だった鉄屑の中を探り抜き取ると白と黒の半分の色に別れた長髪で継ぎはぎだらけの頬から睫毛の長い強気な瞳がこちらを睨み付けていた。
首から下はない人形の頭部で無くしてしまったのだろうかと考えながら僕は、しばらくその綺麗な瞳を見つめているとまた声をかけられ、その声が人形のものである事から先程から声をかけていたのは、この頭部かと確信した。
その声は、ぜんまい仕掛けの機械じみたものでもなければ録音したような独特の作られた声ではなくなんの違和感のない透き通った美しい声だった。
『やっと妾に気がついたか』
『うん、うん、
みみをねぴーんってしたらきこえたの
おにんぎょうさんなんでからからないの?』
『からから?なんじゃ、それは』
『からからはからからだよ』
『……話にならぬな。犬の子よ。』
僕が首をかしげると目を逸らし溜め息をついた。
ひとまず人形の頭部についたゴミや埃をはらい胴体の代わりになるものを探してあげることにし、一旦ガラクタの上から降りていつも寝ているベンチに向かい人形の頭部を置いてから、今まで使えそうな物を集めていたのでそこから探してみると、女性型の胴体が見つかった。
首、片腕、片足が無く腕足はあとから別の物をくっ付けベンチに寝かせた頭部持ち上げその体に差し込むと、人形は、自ら立ち上がりどうやら相性は大丈夫なようだ。
僕より少しばかり身長が高めで見た目的になんの違和感もないのでよかった。
僕のように人狼や生身の体は無理だが、ロボットや人形なら、相性がよければなんだって適合する。
便利なものだ。
少しの間、人形さんは手足を動かしてから、瞬きを一つししてから僕を見下ろし頭から耳の辺りを撫でた。
何処か懐かしい感じに思っていると、人形さんは僕にお礼を言ってから自己紹介をしてくれた。
後に僕の名前を聞かれたが僕には名前がないと言うと目を細目一言言葉を口にし悩むしぐさした。
『そうか、犬の子には名がないのか。』
『うん、ないないよ。
それよりなんでぼくをよんだの?』
改めて、そう聞き直すと人形さんは目を開いて少し微笑んでからずっと前から誰かを呼んでいたらしい。
話を聞くと、人形さんも同じく何故か体を無くしゴミ溜めの中にいたと言う。
そして、誰かに気づいてほしくて、ずっと呼んでいたと言い記憶は曖昧で覚えていないが僕と同じく何か『大切な物』を無くしてしまったから探したかったと話してくれた。
僕も『人』を探していると言うと人形さんは、僕の両手の袖を掴み、ならば共に探そうと言い僕は、嬉しかった初めて似たような人と巡り会えたと独りじゃないと思えたから……
僕は、深く頷き人形さんと手を繋ぎあのガラクタより先に進もうと言うと人形さんは、あの先にはここと同じ光景だと話してくれた。
『なんでわかるの?』
『我が埋まっていた時
鉄屑の間から見えたのじゃ
ここではなく逆の道へ向かうと良い。』
この先には、町などないただの荒れ地だと言い人形さんは僕の手を引きここではなく、逆の先が出口だと教えてくれた。
曖昧だが何故かこの場所を知っていると不思議そうな表情で言い僕よりはよく記憶は残っているようだ。
それに従い比較的通りやすい逆の道を進むとたまに塞がる鉄屑を退かしながら細い道を進んでいった。
ずっと、ずっとガラクタを掻き分けていたのがアホらしく感じてしまうほどにすんなりと別の場所へと通ることができた。
僕は、目を大きく見開き驚いていると、人形さんは手を差しのべ道を探そうと言った。
僕は、その手を取りその声を信じ何もない無音の霧の中を歩き続けた。
→ → next→→
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます