第28話

 その日のお風呂は盛り上がった。

 おれは、リーゼとロザミアとアイザの三人と一緒にお風呂に入っている。三人の体を洗うのはおれの役目だ。

「いよいよ、帝都目前まで来たのう」

「そうですね。いよいよ、最終決戦ですね」

「めかけが思うに、救世主さまが素敵すぎます」

 リーゼに褒められた。うれしい。

「まさか、わらわもまことがサタンパピーを一撃で倒すとは思わなかったぞ。あれには、感嘆した」

「いやあ、たいしたことないよ」

 おれが謙虚に答えると、ロザミアがむっとした。

「まことはわかっておらん」

 なんだ?

「帝都を攻略したら、わらわは戴冠せねばならん。その時、当然、結婚の儀をとり行うであろう」

「け、結婚だって?」

 おれは驚いた。まさか、ロザミアは誘っているのだろうか。

「ちょっと、ロザミア様、めかけに異議ありです。救世主さまは帝国をとり戻した後でも、めかけと旅をしなければならない身です。めかけに黙って、救世主さまをとりあげようなどとは考えておりませんか?」

 おや、ちょっとロザミアに強気でいいすぎではないだろうか、リーゼ。

 だが、リーゼと旅をつづけることになるだろうなあ。高位の魔道士を探さなければならないし。

 まあ、おれはリーゼがいれば、申し分ないが、三人一緒に相手するというのもたまらない。

「リーゼこそ、わかっておらん。わらわと結婚するということは、これまでのような風呂手伝いの付き人ではなく、交尾をする相手になるということじゃ。わらわには想像もつかんのじゃが、交尾とはどのようなものであろうなあ」

 ごくり。おれは唾を飲みこんだ。

 ここは、的確な判断が要求されている。ロザミアと結婚しては、リーゼとアイザが離れてしまうかもしれない。二人を失うのは惜しい。もったいなすぎる。

 できれば、四人で交尾したい。

 というか、ロザミアは性交のことを交尾というのか。

「ロザミア様に女色の気はおありかと」

 おれはわけのわからないことを言い出した。

「なんじゃ? わらわが女色とはどういうことじゃ、まこと」

「はい、ですから、ロザミア様は男の方とも、女の方とも、交尾なされる方かと思っておりました」

「ななななな」

 ロザミアがあきらかに混乱している。

 リーゼとアイザは様子をうかがっているようだ。

「どういうことじゃ、まこと。わらわが嫌で、わらわに女でも押し付けて求婚を断ろうということか?」

「ロザミア様! ロザミア様は、まことに求婚なさっておいででしたので?」

 アイザが驚いた。

 リーゼは様子を見ている。

 リーゼとロザミアを結びつける勝利の方程式。それがロザミアの女色癖。

「うおほん、アイザ、万が一の話じゃ」

 ロザミアが否定した。照れている。

 おれは話をつづける。

「おれが思うに、ロザミア様は、リーゼとアイザを愛しておいでです」

「えええ? 何をいいだすんだ、まこと。わたしがロザミア様に愛されているなどと」

 アイザが動揺している。

 こいつは、マジだから、始末に困る。

 リーゼは様子を見ている。

「そこで、婚礼の儀ですが、ロザミア様は、おれとリーゼとアイザの三人と重婚なされてはいかがでしょう」

「はっ!」

 ロザミアが天啓に打たれたように衝撃を受けている。

 おれが誘っているのに、気づいたのだろうか。

 おれが何を誘っているのかに気づいただろうか。

「あはははははっ、考えてもみなかったわ。わらわが女娼を囲うというのか」

 ロザミアの後宮を女で埋めつくすこと。これこそ、勝利への方程式。

「あははははっ、よい、面白い案じゃ。なあ、アイザ」

 突然、話を振られて、アイザは声が高くなった。

「わ、わたしはそれでもいいと思います」

 この女は本当にロザミア目当てだから困る。

「めかけは、救世主さまが男娼として、囲われるなら、めかけも女娼として、囲われてもかまわないと思います」

「何をいっておる。立場上、男娼ではまずかろう。表向きは、夫ということにしなければ」

「ぷうう」

 リーゼの頬が膨れた。

 かわいい。

 が、ここはリーゼに折れてもらわなければ。

「リーゼ、リーゼはおれがこの世界から帰れない責任をとって、ロザミアの女娼をやるべきだと思うが。それがリーゼの責任だろう」

「はーい。めかけは救世主さまのめかけでございますから」

 いった。確かに、おれのめかけだっていった。

 よしっ。

 ロザミア後宮、女漬け計画始動。

 そこで、何が行われるか、ロザミアとリーゼは気づいている。知らぬはアイザばかりよ。ふふふふっ、あの愚か者が。

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