第25話 ヤキモチ五月
ピンポーン……。
おや、五月家にお客様です。
どなたでしょう?
「はい、はーい。どなた?」
「あら、ヒロシくん。こんにちは」
「あ、カオルさん。えっと……先日はどうも……」
「ふふふ。もう大丈夫よ。五月先生いらっしゃる?」
「あ、は、はい。せんせー、カオルさんですよー」
「ん。お通しして。それと、お茶はいいから、USB買ってきて」
「え? い、今からア◯バですか?」
「そう」
「わかりました。行ってきます」
五月先生、体良く人払いです。
〈なんだよ先生、このタイミングで遠くへお使いって。絶対あのふたり何か企んでるぞ。まさか、俺の婚約パーティーとかしちゃうんじゃないの? いや、まだちゃんと付き合ってるわけじゃないしな……。いや、あの人たちのことだからあり得る……〉
ヒロシ、心配ご無用。
いくらなんでも、それはあり得ませんから。
「五月様! またクリスマスツリーに靴下干して!」
「いーじゃん、別に」
「いくないです!」
「いーじゃん。今はクリスマスじゃないんだから」
「だからって、この木は物干しでもありません!」
「うるさいなぁ……」
「んー、もう!」
次の日。
「五月様、またクリスマスツリーにパンツ干して!」
「またじゃない。パンツは初めて」
「パンツだって靴下だって同じです!」
「あー、うるさい、うるさい。」
「んー、もう!」
「こんなにうるさいなら、お前もヒロシくんと一緒に実家帰れ」
「え……」
その次の日。
「今日も朝霧家?」
「はい。お引越、もうすぐですから。ヒロシも同じ日に実家に帰るって言ってます」
「そうか……」
「あ〜、五月様! ポテチのかすがこんなに!」
「ん? ああ……」
「ちゃんときれいにしといてくださいましね!」
「毎度毎度うるさいなぁ……」
「五月様が大人げないことばかりなさるからでございます!」
「こんなにうるさいなら、お前も朝霧家と一緒に大阪行っちまえ」
「ふぇ……」
めいとさん、五月先生のこの言葉にはちょっとショックだったようです。
「……めいとちゃん?」
〈昨日は実家に帰れで、今日は大阪に行っちまえ……〉
「ねえ、めいとちゃん?」
〈五月様、わたくしのこと要らなくなったのですか……? あ、前にカオルさんが言ってたように、どなたかいい人でもいるのでしょうか……〉
「えーっと、めいとちゃん?」
〈きっとそうです! わたくしに隠れて、どなたかとお付き合いしているのです!〉
「えーっと……」
〈そうなのです。わたくしは、もう要らないってことなのです!〉
「めいとちゃん!」
「あ、は、はい!」
「どーしたの? ぼーっとして。大丈夫?」
「はっ、申し訳ございません。だ、大丈夫でございます」
「ならいいけど……。ねえ、最近、五月先生、どう?」
「ぐっ、どうもこうもございません!」
「え?」
「何度言っても、クリスマスツリーにパンツやら靴下干すのをやめてくださらないし」
「は?」
「机の上にポテチの食べかす散らかすし。まったくなのでございます」
「そう……」
「五月様はわたくしのこと、もう要らないのでございます」
「へ?」
「わたくし皆様と一緒に大阪に参ります!」
「え、ちょっと待って……」
「はい。そういたします! もう決めました!」
「……」
そのまた次の日。
「毎日たいへんだな、朝霧家の引越。ホントにお前も行くの?」
「はい。ヒロシも、もうすぐですね」
「俺の荷物なんかボストン一個だからな。あ、そういえば、五月先生ヤキモチ焼いてたぜ」
「ふぇ? ヤキモチ?」
「まったく、大人げないよな。飯食ったすぐあとに……って、いない」
〈五月様がヤキモチ……五月様がヤキモチ……五月様がヤキモチ……〉
えーっと、めいとさん、それは勘違い……。
あー、もう!
だから『うふふ』は要注意なんです。
カオルさん、なんとかしてくださいねっ!
それにしても五月先生とめいとさん、なんともじれったいです。
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