No.3 食卓に心臓
※カニバリズム風味
※汚い
食卓に君の心臓が並ぶのを見て、僕が思った事は「塩気が多そうだ」というだけだった。
君のことは愛していたはずなのに、君の心臓は好きになれない。それが不思議でならなかった。鼓動が止まったそれに何の感情も湧かなかったのだ。
「私を食べてね」
かつて病床で君が言ったことを反芻する。
「もしも私が死んだら、私を食べて。あなたのものにしてね」
反芻。
つまり、一度飲み込んだその言葉たちを胃液共々吐き出して、噛み締めて、また飲み込む。
そんなことをしながら、僕は料理を作ったのだった。
先程も言ったが、そこに愛情はなかった。
ただ、調理している間は、床に散らかった自分の吐瀉物のにおいと胸につかえる苦しみ、そして生理的な涙が、僕に“まだ惨めに生きている”という現実をいやというほど突きつけていた。
「ずっと私を忘れないで」
僕は反芻する。咀嚼し、嚥下し、吐き出し、また咀嚼する。繰り返し、繰り返し、繰り返す。
このある種の呪いのようなものが自分の血肉になるまで。
ナイフとフォークを手に取った。僕は言葉を口にする。
食事をする時のマナーとして。
今から僕の口に入る食材に想いを込めて。
「いただきます」
そして、ナイフを突き立てた。
※
君の心臓が食卓に並ぶのを見て、僕が思った事は「塩気が多そうだ」というだけだった。君のことは愛していたはずなのに、君の心臓は好きになれない。それが不思議でならなかった。鼓動が止まったそれに何の感情も湧かなかったのだ。
#心臓・君・僕・で文を作ると好みがばれる #twnovel
↑元ネタツイート。
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