第4話カフェにて、女子高生達の噂話

「ねぇ、ねぇ、<<空想病>>って言う病気、知ってる?」

「なぁに?いきなり」

平日の夕暮れ時、駅の近くにあるカフェで女子高生三人組の会話で、年より同士の話題でもない限り、普段、耳にしない珍しい単語が飛び出した。

「いや、全然知らないけど。なに? どうしたの?」

「なんかね。最近出来た都市伝説のひとつらしいんだけど……」

「あれでしょ。小学校の時にどこからか流れてくる噂話。ほとんどが漫画からの話なのに、あたかも自分の体験のように話す人いたよね」

「思い出した。学校の七不思議とか放課後に遅くまで遊んでいると口裂け女に攫われるぞとか脅されたっけ」

「そうそう。地域や県によってもそことなく違うのに、妙にリアルだったよね」

「全国的に有名な話もあれば、地域限定の話もあるみたいね。関西ではタバコサイズの小さなおじさんがうろつくとか言われてるよね?関東じゃあまり知られてないけど」

「逆に関西には東京の話を知らない人もいるよね。男の人が三十だか四十過ぎても結婚できないと魔法使えるとか賢者になるとか」

「なにそれーっ。賢者って。ウケル」

長時間話をしているのか、三人ともカフェオレを飲み終えてしまい、紙コップの山がテーブルにできあがっていた。

カフェは駅前、しかも隣がマクドナルドという立地条件から、客がひっきりなしに入れ替わり立ち替わり休みなく出入りしていた。

「ネットの掲示板に嘘の都市伝説をでっちあげる人が結構いるんだ。でね。その中に面白いのがあったの。ごく最近つくられたやつ。メジャーになるかもと思って」

「へぇ、どんなの?」

「なんでも、自分の殻に閉じこもっている人がかかる病気があって、自分だけの世界を現実の世界に干渉できちゃうんだって」

「どういうこと?」

「えっと、夢を現実にするから実現って言うじゃん?つまり、<<空想病>>ってのは例えば『こんな世界があったらな……』っていう考えをずーっと、ずーっと考えるんだって。一日中でも、何ヶ月でも。そうしたら、それが叶うんだって。<<空想病>>っていう病気にかかった人は」

「ええっ!それいいじゃん」

「でもね。自分の意思はその願いだけになって、他に何をしたいという欲求が無くなるんだって。傍から見たら、周りの声も聞こえないし、夢遊病のように何を考えているのかわからないんだって。そんな風になりたい?」

話を聞いている二人が、あわてて首を振る。

「噂話よ。都市伝説なんて全部嘘に決まってるじゃない」

「なんでも、若者の間に流行ってるらしくて、毎日ぼーっとしたり、何かをつぶやくようになるんだって。それで、ある日突然なにも言わずに消えちゃうんだって」

「家出ってこと?」

「誘拐かもね。失踪しているのはほとんどが女の子みたい」

「こわいー」

「海外に売られたらどうしよう」

「あははっ、アンタなんて一万円もしないかもよ」

「ひっどーい」

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