寝てた?

紀之介

デート中なのに

「おい、芽生子!」


 女性は、隣で自分の名前を呼ぶ男性を見ました。


 手を伸ばすと、芝生で寝ている彼の肩を揺すります。


「和太?」


「…」


「おはよう…」


「…寝てた?」


「─ デート中、なのにね」


「…ごめん」


「で、どんな夢、見てたの?」


「…見てないけど」


「私の名前、呼んだよ?」


「…」


「見てなかったら、寝言で名前なんか、呼ばないでしょ?」


「そうかもだけど、見てないし…」


「…私に言えない様な、夢見たとか?」


「どんな夢も、見てないんだけど…」


「寝てる時に見た夢の話なんだから、どんな内容でも、怒ったりしないって!」


「だから…見てないんだって!」


「…判った」


 この変な問答が終わのかと、ほっとする和太君に、芽生子さんは言いました。


「もうお終いね、私達。」


「…え?」


「見た夢の話もしてくれない様な、薄情な人とは、私、もう付き合えない!」


 そう言葉を発した彼女は、立ち上がって、すたすたと歩き出します。


 和太君は、遠ざかる彼女を止めようと、声を掛けました。


「おい、芽生子!」


----------


 女性は、寝言で自分の名前を呼ぶ、隣の男性を見ます。


 手を伸ばすと、芝生で寝ている彼の肩を揺すりました。


「和太?」


「…あ、芽生子?ごめん、寝ちゃって」


「─ ところで今、どんな夢 見てたの?」

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寝てた? 紀之介 @otnknsk

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