11.

 西斜坑を伝うことで、大崩落していた本斜坑・添斜坑の上部にやってきた。地下3000メートルから上は、生存者のグループが多くあった。

 初めは2800メートルのところにいた男2人、女1人のグループ。電力も食料も豊富で、もう1月は耐えられるという。9200メートルから来たと言うと驚かれた。もし地上に出られたら救助を呼ぶことを伝える。

 2100メートルのところには女2人のグループ。こちらも電力・食料はまだ充分にあったが、2人の女の関係が上手くいってなさそうだと、別れてから西口がぽつりと述べた。

 1600メートルのところには6人の下請けの男達がいた。彼らは一帯を調査しており、1200メートル地点で斜坑が大崩落していることを伝えられた。

 私は、新幌内炭鉱のとある個所が、旧幌内炭鉱に接続していることを知っていた。途中から100年前の炭鉱に出られるのだ。その場所は調査したのかと尋ねると、そんな場所は知らないという。もし地上に出られたら救助を呼ぶことを伝える。

 彼らはいずれもなぜかこの壊れた炭鉱に馴致してしまっていた。脱出しようとせず、そこの資材を費やして暮らしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る