マジック・マジック・マジック!

パンプキン

初めての魔法使い

もう、望んじゃいけないって分かってた。


私には、魔法使いには慣れないんだって分かってた。


じゃあ、なんで?


今私は魔法使いに囲まれてるのーー!?


〜数日前〜


「ネネ!ちょっと店番変わって!」


正午の店はやたらと混む。私、ネネの家は有名なパン屋だった。


今日もすごい人…。


パタパタと走り、エプロンを着てレジの前に立つ。


指でレジに触れると、固定魔法が作動して勝手にレジが動き出した。


(店番って言っても、ただ見張っているだけじゃない…。)


パンを詰める行為もロボットが全て行っている。


只々暇なので、ネネは本を取り出して読んでいた。


【この世界には二つの人間に分かれている。一つは只の人間。もう一つは魔法使


い。魔法使いかどうかは誕生後すぐに判別できる為、その後の人生は運任せでしか


ないだろう。】


(一般に向けて固定魔法が発売されたから、人間は暇なのよ…)


ふと顔を上げると、目の前に男性が立っていた。


「ひやあああああああああ!!!!!!」


店内が静まり返る。客が一斉にこっちを見る。


「し、失礼致しました…。」


男性はくすくすと笑いだした。


「何か用ですか。」


「店の前にね、変な奴がいるんだ。君、店員だろう?なんとかしてくれよ」


店員だからってこき使いやがって…。ネネは怒りをぐっとこらえ、店の前に出た。


「ん…?」


いつもと変わらぬ風景。


「特に変な人なんていませ…」


振り返った瞬間、店が結界で包まれた。


「な、なんで…!?」


触れると強い電流が走った。手が焼けるように痛い。


「っーーー!!!!」


中の声は聞こえないが、店員は怯えた顔で逃げ回っている。


涙が溢れる。中では血が滴っている。このお店は大事なものなのに!


悔しい。唇を噛んだら血が出てしまった。


こんな時に、魔法使いがいれば…!


「誰か…誰か助けて!!」


叫んだ瞬間、自分の横を男の人が通り過ぎた。綺麗な白髪で、長いローブを着てい


る。結界に触れようとしていた。


「下がってて。」


男性はそう告げると振り返り微笑んだ。


結界に触れると、みるみるうちに破れてゆき彼は店に入っていった。


「終わったよ」


店に入ってから出てくるまで僅か10秒の出来事。


彼は指を振っていただけだったのに…


「あ、あの…ありがとうございます!貴方は一体…」


彼は近付いて、ネネの手を取った。


「えっ…!」


彼が指でなぞると、さっきの傷がみるみるうちに消えていった。


「礼なんかいらないよ。じゃあね。」


頭を撫でて、男性は過ぎ去ってゆく。ネネの心がざわついた。


「ま、待ってください…!」


ぴたりと足が止まる。気がつくとネネは彼のローブを握りしめていた。


「あ、あの…で、弟子にしてください!!!!!」


彼の足元しか見えない。勢いでやっちまった感が拭えなかった。


今更、顔なんてあげられない。


(あああああああ。近所の人に見られてるよぉ!!今後生きてけないよぉ!)


「…いいよ」


…今、なんて言った?


「…え!!!!?いいの!!??」


「うん。僕が断ったせいで死なれても困るしね」


「死なれたら…えっ?」


(心の声…聞かれてたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)


「今日の夜に、迎えに来るね。」


そう言って、彼は私にペンダントを差し出した。


「これ…つけてて。」


「綺麗…。」


「じゃあ、また後でね。ネネちゃん」


そんなことまで知られていたとは…!!恥ずかしい…!!!


「ありがとうございます!!」


何てことない晴れた日に、いきなり突飛なことが起きた。


頬をつねっても痛くない…!


「最っっっっ高!!!!!」


スキップをしながら勢いよく店に戻った。



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