アクアリウムとムールの生徒

アクアリウム、その美しさから昔から神々が創ったとも称されるほどのくにだった。

あの国は科学というものがうまく発展しなかったため、空気も綺麗だったし、人口も少ないからな王家と平民の関係もよかった。

父上はよく漁にでて、母上は機織りを営んだ。僕らは学校に行ってた。…これでも頭はいいんだよ。セイは薬学を、僕は生物学を学んでたんだ。

まあ、セイは美少女だったからモテてモテて大変でさそれで兄として守ってやろうってことになった。


「それだけ?」

「酷いなオーシャン君。とりあえず僕は今君にはここまでしか言えないんだよ。もっと君には動いてもらはないと。」

何をどうすりゃいいんだと言わんばかりのその顔に思わず笑ってしまった。

「とりあえず僕は妹ちゃんに会わないといけないんだ。αβγが今は危険だからね。」

「アルファ…?」

「知りたがりだね。たまには自分の力でどうにかしてよ。」

僕は船長室からでていった。

少し駆け足で。





エンジンの音だけが響いた。

状況、ドロドロ。

とりあえず、美海は守らないと。

ロボとして守らないと。

静かに美海を抱きしめた。

「怖い?」

「少しだけ。」

彼女は強がりだ。ここにこれから来る人は、奪とラニアだろう。

今のうちに逃げねば。

「美海、持ち上げる。」

「えっ?わっ!」

思っていたより軽い。

船長の元に行かないと…!

エンジンルームから逃げ出した。

走った。ガンマはアルファに任せよう。

しかし、奪とラニアに遭遇してしまった。

「あれ?美海ちゃん連れてどこに行くの?」

「まあ、お姫様抱っこ?素敵ねぇ。」

逃げなきゃ。守らなきゃ。大切なものは守らなきゃ。

「ごめん。零、ラーズ。教えられない。ここ通る。」

「へー、断るよ。その子欲しいんだよ。ね、ラーズ。」

「そうね。私たちにも色々事情があるのよねラニア《零》」

敵。やはり。彼ら、強い。でも自分より、弱い…!

「……美海。ちょっとだけ目をつぶって。」

自分も、月下人。能力は、覚醒月から貰ってる。

「思考変化。」

初めて使った。危険って教わったから。

でも使ってしまった。

『罪というのは消えぬものだ。その力はその罪を作る思考を消すためにある。君ならきっとうまく使いこなせるよ。応援してやるから、帰ってこいよ。龍…!』

父の声が聞こえた気がした。




「なんで…なんでこんなことをするの?友達だと、思ってたのに…!」

自分の顔と手元にあるナイフを交互に見てきたひと国の王子。

「ごめん、ごめん…。」

自分でやったことなのに目を逸らしたくなる。

「お願い…せめてそばにいてよ……」

気持ちが揺らいでしまった。

「本当に…ごめん…。」

ここから離れたくなった。

いや、離れてしまった。

「待って!!行かないで!!」

「あ…あ…」

逃げ出してしまった。

「お、俺。あ、アルファ…。…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「行かないで!!ラーズ!!!!」



脳裏に浮かび上がったあの時の彼。

次にあった時も彼はあの時のままだった。

俺のことは忘れていた。

だから今度こそ友達になるって決めてたのに。

「おい、奪。大丈夫か?」

ラニアの言葉が聞こえた。

でもラニアの方は向かなかった。

片手にあの時のナイフを持った。

忘れられない初めて人を傷つけたあの日。

そのナイフで自分の髪の毛を切った。

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