第11話可愛い可愛い弟

姉様の体を借りた。

アルファ、ベータ、ガンマは気づいていない。

ベータとガンマについては知っていたがアルファについては知らなかった。

彼の記憶を辿ってみることにした。


どこか懐かしい館。

これがアルファの生まれ故郷か。

幼い足音が聞こえる。

それとおとなの足音。

「王子、待って。私そんな足早くないの。」

「ごめんなさい、早く見せたいものだったので。」

仲睦まじく話す親子。

自分も昔はよく母上と父上と姉様で遊んだっけ。

しかし、彼は王子だったのか。

一体どこの国のものだろう。

もう少し先に進もう。


「母上!本日はとても寒いのに…見送りに来なくて良いのですよ?」

「いいえ、自慢の息子に、10年も会えなくなるのですから。」

10年制の学校か。ザハール王国でも、サイール大国でも無いな。

ムール帝国かな。

「それでは、行ってまえります。」

小さい体でも乗馬はかなりうまかった。

歳は、12ぐらいであろう。


彼の学校は人間性がかなり劣られてる。

あんなに行く前はキラキラしてた目も今はここに無い。

でもその倍強くなっていった。

でもこの記憶は12年前のもの。なら彼は今は24ぐらいのはず。

それなのに彼はなぜ未だに12歳のままなんだ?


暗い路地裏に連れ込まれてる。

胸からは血が流れている。

嫉妬による殺人か。

アルファが泣きながら叫んでいるのに周りは気づかない。いや気付かないふりをしている。母上、母上と泣き叫ぶ。

「いー素材みーつけたぁ」

怪しく笑う男がアルファを攫った。



薬漬けされた彼が目を覚ます。

12年もの間彼は眠った。

怪しい男は改造してその少年は生き返る。

そこにはベータとガンマがいる。

怪しい男の研究はアルファから始まったからそのノリで次の子にベータ、その次の子にガンマとつけたらしい。

ベータは優しくアルファと話す。

それがどうやらガンマは気に入らなかったらしい。

ガンマはまだ女の子として育てられている。

アルファが話そうとするとガンマは無視をした。

ガンマは女の子になれなかった。

アルファは慰めようとした。

ベータも。

だけども打ち解けることは無かった。


そして今、彼の体は24の青年だ。

僕を、いや美海を守るように前に立っていた彼は、新しい時を生きようとしている。

しかしベータは…?




「船長、今ならチョップ出せそうですよ。」

「出せても俺には効かない…あー疲れた。今日の夕飯何?」

えっ、ちょっと目を離した隙になにやってんの?少し過去を覗こう。

「おい、アトランティス。過去を見ようとしてんじゃねーよ。」

……!

「海鳥で過ごしてたらお前がいるくらい気づく。あと定期的に美海に入ってただろう?あれ結構バレバレ。」

何このふたり仲良く酒飲み始めてんの?

僕のこと気づいたの?

「ちょっとお話してたら馬鹿馬鹿しくなってね」

え、話聞こえんの?

『もちろん』

姿は

『見えてる』

…織佳、たまにホームシックで泣くんだよ

「えっ、マジで!」

「見られてたんですか…」

船長の力か。

「そうそう、お前、酒飲む?」

…5年ぶりに飲みたい。

「ふーん。美海の中に入る前はお兄ちゃんだったんだー」

えっ?

「美海は今16歳。弟ならそれより年下になりますから」

あーバレた。

「まあ、色々語りたいことあるから、体、作ってやるよ」

体…?

「お前今は無くなっちまったけどアクアリウムの王子だろ?だから姿かたち俺覚えてんの。」

そこまでバレる?

「うん、深い話はあとにしていい?チャチャッとりやりたいからさ」

あ、はい。

船長が僕の前に手を出すと本当に僕に体がついた。

『うわぁーイケメンじゃん』

「そりゃ海の秘宝と言われたぐらいだからね。」

ほんとあの時のまんまだ。

「アトランティス王子、その」

「ティスでいい。」

長い名前だったな

「それではティス王子。我々の過去見たのでしょう?それならあなたの過去、教えてください。」

なみなみ注がれた綺麗な酒を渡された。

「毒入ってない。」

「そりゃ当たり前だろう。」

変に警戒しないで語ってやろう。

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