海鳥

五月雨

第1話 平和と夢を手にするために

「おい、零、みつかったか!?」

「いいや、逃げ足がどうも早すぎて追いつかないみたいだよ、トラップ」

「まぁ、女が逃げるのもわかるなぁー」

政府があんなことを言わなければよかったのだ。

女を一人連れて行って、船員が死にかけたら女を売る。

しかし海鳥は人だけが消えて、船だけが戻ってくる事が毎回ある。

女の命はどちらにせよない。

「トラップ!あそこに!!」

で、今回目がつけられたのは、親がいない16の少女、美海(みう)だったのだ。

「零!お前が行け、お前と美海の歳おなじぐらいだろ!」

「トラップだって同い年じゃ」

「俺の顔見たら10歳の男の子でも泣くんだぞ」

零は、俺の相棒。薄い水色の髪が雑に切られているが決して短くはない、肩につくくらいだ。そして濃いめの青い目をしている。

「へいへい、行けばいいんでしょ」

めんどくさいなぁって顔してんなぁ…



「みーうーちゃーんー!」

ビクッと体を震わせた。

こういう子、結構俺好きなんだよなぁー!

「ぁ……」

おっと、逃げられる

逃げないように、彼女を壁まで追い詰めて、両手の間に入れた。いわゆる壁ドンだ。

「ぁ……ぅ……」

あ〜泣いちゃった。……おもしろーい。

「美海、泣いてもだめだよ。俺は、君を助けることできないから。」

「………」

「あまり君に手を出したくない。だから君は素直に俺と一緒に海鳥に乗って欲しいんだ。」

あ〜やっぱり嫌だーって首振るよね

しょうがないなぁ。

「嫌?そうだよね。だから」

彼女の首元に口を近づけ、ぺろっと下で舐める。

「ぃ……ゃ……」

そして彼女の首元に歯を指した

「いっ」

ジュルりと血を吸った。

ヴァンパイアのように

「君が来るというまで吸う。言わなくても貧血で倒れさせて無理やり連れて行く」

「……あなたはヴァンパイアなの?」

「海鳥ではヴァンパイアと呼ばれているよ」

そしてまた吸う

「う……ぐ……」

この船には、少し変わった人しか乗らない。

血を好む者や、狼のような丈夫な牙を持つもの、千里眼を持つものや、とても高く飛べる者もいる。

「わ……かった。あ……な…たに…付いてい……」

付いていくっていう前に倒れちゃった。

こんな事があろうかと、強制血液増加剤を持ってきていた。彼女の細い腕に刺す。

「ん……」

目が覚めたみたいだ。

「やぁ、貧血姫。」

そう言うと美海は

「何故、あなた達は船に乗るの?」

急に聞いてきたからビックリしちゃった。

でも、かっこよく決めたよ

「知りたいなら、船に乗って。教えてあげる」

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