第3話…愛してた、愛してる。
ねぇあなた、私好きな人がいたのよ。
か細い声でお前が言うのを俺は黙って聞いている。
そうかと、ただ頷いて。
ねぇあなた、あなたは私を好きだった?
もちろんだと、頷いた。
ねぇあなた、私のこと知ってる?
もちろんだと、頷いた。
ねぇあなた、私の名前を言ってみてちょうだい。
×××。
ねぇあなた、いつからあなたは私を見なくなったのかしら。
目を伏せて、俺は黙って聞いている。
ねぇあなた、これで最後よ。
顔を上げた。
「ねぇあなた、愛してるわ」
お前はいつまでも美しかった。
「俺も愛してるさ、」
あの時から何も変わってなどいなかった。
「待たせて悪かったな」
いいえと微笑むお前は、あの頃とひとつも変わらない。
お前への愛も、何もかも。
重い肉体を置いて、お前の手を取った。
「俺はお前しか愛せないよ」
お前しか愛せなかったよ、
体が軽い。
お前となら、どこまででも行ける気がした。
もう二度と離れぬように、固く、固く手を握りしめて。
さぁ、行こうか。
神様が待っている。
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