第17話
【二つのテクニックの意味】
まさおは、内心の興奮を隠せなかった。
今までテレアポでは、全然とれなかった。進化していないと感じていた。
しかし、師匠は、ちゃんと自分の長所を見てくれていたのだ。
お前に、向いてる世界がある、と。
こんなに嬉しいことはない。
心理カウンセラー?
悩める人間、弱っている人間の相談に乗る。
テレアポというものは、結局、嫌がってる人にどうやって、振り向かせるかというところがあった。
こちらから攻撃を仕掛けるのだ。
それに対して、心理カウンセラーというものは、向こうを攻撃しなくてよいのだ。
まさおは、どんなにめんどくさい相談でも、親身になって、優しく、全て受け入れようと、そう決意を新たにしたのであった。
「師匠!二つのテクニックの意味を詳しく教えてください!」
テクニック1
相手の意見を絶対に否定しないで、相手が自分で間違いに気づくようにしむける
「これは簡単や。人に意見を否定されるとな、人間ってのは、私の意見を否定された、イコール私を否定されたって感じるもんなんや。普通の人でもそうや。精神病の人、弱ってる人なんて、もっと、そう感じるやろ?」
ジジイの話は明快だった。
まさおもテレビのドキュメントで観たことがある。
変な新興宗教に入ってる信者の洗脳をとく専門家は、絶対にその人の宗教を否定しない。
そして、他の様々な新興宗教のやり方を見せていっしょにバカにするらしいのだ。
「不思議なもんでな。そいつは、自分は変な宗教に入ってるくせに、他のインチキ宗教の映像とか観せたら、馬鹿馬鹿しいと言って見下しよるねん。で、ここがおかしよね、こんなことありえへんよね?って話をすると、ちゃんと常識人の返し方をするねん」
まさおは聞いた?で、最後はどうするんですか?
「おかしいよね?って、言い続けるだけ。『うちの宗教はそれにくらべて、まともで、良かった』なんて平気で言ってるけど、だんだん、気がつくねん。うちの宗教と共通点めっちゃ多くないかな?ってな。そこまで我慢して、優しくもっていくのが、心理カウンセラーの仕事でもあるんや」
なるほど。ジジイの話は、明快である。
そして、何より嬉しいのは、まさおにとって、それが向いていそうなことである。
テクニック2
自分の失敗談などを話して、スキを見せる
「これはわかるやろ?」
「はい!多分!プライドが高い人間にとって、上から目線でモノを言われるのは屈辱なので、スキを見せることによって、人に教えながら、“あれ?俺もそれをできてないんじゃないのか?”と自然に思わせるわけですよね?」
ジジイは、まさおの肩をもみながら、答えた。
「その通りすぎて、補足もいらんぐらいや!お前は向いてる!!最高やな!」
ジジイに褒められてまさおは嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
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