第27.5話 11/11

 新たにスティック菓子の袋を開けて、二人でぽりぽりと食べる。

「夜にこんなに食べたら太っちゃうかな」

「みぞれは全部胸にいくから大丈夫でしょ」

「むー。気にしてるんだから、そういうこと言わないでよ」

 わざとらしく頬を膨らませて見せるが、本気で怒っているわけではない。二人はくすくすと笑い合った。

「しかし、すごい量だよね」

 壁の本棚を見上げながら、津々実が言う。

「これ全部ゲームなんでしょ? ボードゲームって、こんなにあるんだね」

「うん。知らなかった」

「みぞれ、ちょっとゲームしようか」

「え? か、勝手にやったら怒られない?」

「違う違う、先輩のゲームじゃなくって」

 津々実はスティック菓子を一本取ると、にやにやと笑った。

「修学旅行のときにさ、皆にやれって言われたけど、やらなかったゲームあるでしょ。あたし、本当はちょっとやってみたかったっていうかさ」

 スティックの一端を口にくわえて、みぞれに近付く。

「よく漫画とかで見るけど、実物は見たことがないし。やってみたらどんな感じなのか、実験してみたくない?」

「え、で、でも……は、恥ずかしいよ……」

「大丈夫、今なら誰も見てないよ」

 真剣な表情で、津々実が近付いて来る。こうして真正面から見てみると、やはり津々実はイケメンだ。今は髪を下ろしているので後ろ髪が長いが、それが却って若い俳優のようでカッコいい。

 す、少しくらいなら、実験してもいいかな、とみぞれは思った。どんな感じなのか、たしかに気になるし……。

 ゆっくりと津々実に顔を近づける。津々実の唇がくわえているスティックの、その先端が、少しずつ、わたしの、中に、入って……。


 そのとき、ガチャリと部屋のドアが開いた。


「……人の部屋で何やってんの」

「や、な、なんでもないです!」

 津々実は反復横跳びのような速度で飛び退き、みぞれは恥ずかしさのあまり硬直した。

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