仮面少女とオオカミの森

にゅーとろん

1.少女は異世界へ

○小さな私と大きなあいつの事情

 昔は、「姉弟みたい」なんて言われるくらいだった。それくらい一緒だった。過ごす時間も、やることも、背格好も。

 もちろん、私の方が全てにおいてあいつより上だった。なんたって「お姉ちゃん」だったから。背丈はいつでも同じくらい。だけどあいつは頭を使わないし、いちいち単純でトロくさくて。ケンカをすればだいたい私の勝ちだった。


 なのに。


 小学校を卒業する頃には、あいつの背丈は私を軽く追い越していた。それからもずっと馬鹿みたいに背が伸びているらしい。

 けれど無駄にひょろ長くなっていったわけではない。いつの間にかあいつはいろんなスポーツに手を出していて、そのせいかずいぶんとたくましい身体つきになった。しかもその大部分を上手くこなすものだから、頭は相変わらず弱いくせに、今ではちょっとした人気者だ。


 私だって、何もしていなかったわけじゃない。

 中学に入ってからも、ちゃんと人並みより上の成績はとれている。実家で教えている武術の稽古だって今でもしっかり参加して、一日だって怠ったことはないのに。

 だけどここ数年、背なんてちっとも伸びてくれない。運動にめいっぱい打ちこんだって、あいつみたいな筋肉ダルマになれるわけでもなかった。

 性別と体格の差は明確なハンデとなってのしかかり、全く同じ条件で学んでいたはずの武術ですら、今ではちっともあいつに勝てなくなってしまった。

 それどころか今じゃあいつは、もはや私と本気で勝負などしてくれない。本気の殴りあいなんてできない、と。それほどまでに差は開いてしまったから。


 あいつは、私を置いてずっとずっと先へ行ってしまった。


 私とあいつは、違う生き物になってしまったんだ。

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