仮面少女とオオカミの森
にゅーとろん
1.少女は異世界へ
○小さな私と大きなあいつの事情
昔は、「姉弟みたい」なんて言われるくらいだった。それくらい一緒だった。過ごす時間も、やることも、背格好も。
もちろん、私の方が全てにおいてあいつより上だった。なんたって「お姉ちゃん」だったから。背丈はいつでも同じくらい。だけどあいつは頭を使わないし、いちいち単純でトロくさくて。ケンカをすればだいたい私の勝ちだった。
なのに。
小学校を卒業する頃には、あいつの背丈は私を軽く追い越していた。それからもずっと馬鹿みたいに背が伸びているらしい。
けれど無駄にひょろ長くなっていったわけではない。いつの間にかあいつはいろんなスポーツに手を出していて、そのせいかずいぶんとたくましい身体つきになった。しかもその大部分を上手くこなすものだから、頭は相変わらず弱いくせに、今ではちょっとした人気者だ。
私だって、何もしていなかったわけじゃない。
中学に入ってからも、ちゃんと人並みより上の成績はとれている。実家で教えている武術の稽古だって今でもしっかり参加して、一日だって怠ったことはないのに。
だけどここ数年、背なんてちっとも伸びてくれない。運動にめいっぱい打ちこんだって、あいつみたいな筋肉ダルマになれるわけでもなかった。
性別と体格の差は明確なハンデとなってのしかかり、全く同じ条件で学んでいたはずの武術ですら、今ではちっともあいつに勝てなくなってしまった。
それどころか今じゃあいつは、もはや私と本気で勝負などしてくれない。本気の殴りあいなんてできない、と。それほどまでに差は開いてしまったから。
あいつは、私を置いてずっとずっと先へ行ってしまった。
私とあいつは、違う生き物になってしまったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます