紗紅side
83
信長に仕え、長良川の戦いにて初陣を果たす。信長はあたしに女として生きることを諭したが、あたしはそれに従わず、自ら合戦に志願した。
軍勢に紛れ、甲冑を身につけ刀を手にしたあたしは、例え合戦で命を落としたとしても本望だった。だが、男達の命をかけた戦いは、ドラマや映画とは比較にならないほど、凄まじいものだった。
矢が飛び交い、鋭い刃が何度もあたしを襲う。目の前で人が斬り殺され、血飛沫を全身に浴びる。
義龍軍との戦いは苦戦を強いられ、間一髪のところを何度も信長に助けられた。
「紅、わしの側を片時も離れるでないぞ!」
「……はい」
「殿!義龍軍に敗れ斎藤道三殿が敗死したとのことです!」
「……なんと、それはまことか!?」
信長は帰蝶の父を救援することが敵わなかった。
斎藤道三の敗死により、織田軍は撤退することを決め、兵を引き上げる。城に戻った信長は兵を労い、傷悴しているあたしを部屋に呼び寄せた。
「紅、そう肩を落とすでない」
「殿、於濃の方様のお気持ちを察すると身にあまるものがございます。斎藤道三殿が討ち死にするとは……、悔しゅうてなりません」
涙を溢すあたしに、信長はこう切り出した。
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