26

 叫びたいのに恐怖から声が咽に張り付き出せない。手足を動かし抵抗するが、狭い車中から逃げ出すことが出来ない。


「悟、倉庫に着くまで待て」


「わかってるよ。ひひっ、いい女だぜ」


 涙が溢れ、体の震えが止まらない。


 助けて……

 助けて…………。


 誰か……

 助けて…………。


 男に無理矢理唇を奪われ、口内を蠢く舌に何度も吐き気をもよおし、息が出来ない。


 恐怖と絶望で過呼吸となり……

 次第に意識が遠退く。


 涙で周囲が霞み、男の顔が歪んで見えた。

 鼓膜を揺るがす卑劣な笑い声が、だんだん遠退く。


 紗紅……

 紗紅…………。


 男の腕の中で……

 私は気を失った……。





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