5
ビルの地下にある居酒屋。
薄暗い階段を降りると、木製のドアが見えた。ドアを開けると店内は煙草の煙が燻っている。
「信さん、いらっしゃい」
「
「これは……。可愛い人ですね。信さんの彼女ですか?」
信也と同年齢くらいの若い店主が、あたしに視線を向け笑った。この店主も元暴走族らしいが、今はその面影もない。
信也は店主に視線を向け、無言で口角を引き上げる。
店の奥には2人の男と若い女が数人。
女はこちらに背を向けているが、全員金髪や茶髪。その席から煙草の煙がモクモクとたち上がり、その風貌は見るからにヤンキーだ。
テーブル席に着くと、背後から声がした。
「おう、信也じゃね?」
ひとりの男がこちらに気付き、信也に声を掛ける。
「何だ、
「まぁな。お前、真面目に働いてるってほんとかよ?」
「ああ、働いてるよ。俺達、もう20歳だぜ。お遊びは終わりだよ。宏司らは今何やってんの?まだ
「俺達は色々な。それよりいい女連れてんじゃん。もう新しい女か?」
男はニヤニヤ笑いしながら、煙草を吹かす。同席していた女が後ろを振り返った。
信也と女の視線が重なり、2人の間に微妙な空気が流れた。
「……信也」
「あざみ……」
「何だ、お前ら知り合いなのか?」
「ちょっとな」
信也は言葉を濁したが、女は明らかに動揺している。
「信也の彼女、どっかで見たことあんだよな。なぁ、どこだっけ?」
男は灰皿に煙草を捻り潰す。
「宏司、俺の女をナンパしてんじゃねぇ」
信也に『俺の女』と言われ、あたしは嬉しい反面、どうリアクションすればいいのかわからなかった。
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