魔力を喰らう細菌

第14話 プロローグ


「みなさんこんにちは、マリスです。私の名前は覚えていただけましたでしょうか」


 まあ、覚えていただけなくてもかまいません。次の患者さんの治療において、私の出番はほとんどありませんので。



 ところで、診療所に新しいスタッフが加わりました。


 医療魔術の知識なんてまるでない、アグラとストラツという名の剣士です。



 この二人に医療技術など最初から期待してはいませんし、覚えさせる気もありません。普段は雑用でもやらせておけばいい。そのように考えているのです。


 ですがこの二人を飼い殺しに……失礼、スタッフとして迎え入れることができたのは、この上ない幸運だと思っています。


 医療術師には王宮からいただける大きな仕事というのもあって、報酬も魅力的です。しかし、危険を伴うものも多いのです。


 そのような案件に関わる際、あの二人が役に立ちます。これまではお断りしていた仕事にも、積極的に参入できるわけです。


 そして早速、危険だけれど高額報酬の見込める、王宮からの仕事が舞い込んできました。



 さて、今回の主役は私の可愛い一番弟子、クランベル・リーズ。


 彼女は幼いころに兄を失っており、自らの無力を悔やみ続けていました。これが医療術師を目指し、私に弟子入りを志願した理由に繋がるわけです。


 志の高い彼女はとても呑み込みが早く、簡単な医療魔術なら数日で覚えてしまうほどの才女でした。


 そんな彼女が今後も医療術師を目指して、頑張ることができるのか。


 今回の患者さんの治療はクランベルにとって、その分岐点ともいえる、とても辛くて厳しい試練となったようです。


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