医療術師は不完全

白と黒

第1話 プロローグ

「私の名前はマリスティン・リンゲイ。周りの皆様からはマリスと呼ばれていますので、そのように覚えていただいて結構です」

　職業は医療術師。城下町の一角に、診療所を経営させていただいております。

　私の診療所には、毎日たくさんの患者さんが訪れます。

　剣で刺された兵士から、魔物の毒に犯されてしまった市民。邪悪な魔術によって言葉を失った旅人。

　そんな中でも今回は、とくに厄介だった二人の患者さんをご紹介いたします。

　一人は人間の背丈をも超える大剣の使い手、アグラ・ガンマフェイ。

　そしてもう一人は神速のごとき剣の達人、ストラツ・リアノス。

　二人は幼少のころ、同じ施設で育った戦災孤児でした。そんな彼らも、今や国内に敵なしとうたわれるほどの凄腕剣士です。

　ことの発端は王家より直々に与えられた、とある任務でした。

　さすがの私も、どうしようもないと一度はさじを投げた一例です。