人間罪花

深伊 雪

花のはじまり-プロローグ-

人は報いを受けなければならない。


私はそっと女のだらしなく膨らんだ腹に人指し指を立てた。


「そのお腹の中に今、種を一つ蒔きました。あなたが今の行為を心の底から悔い改めない限り、その花はどんどん育ってあなたを苦しめる病となって、最後にはあなたを殺します。どうぞ苦しんで死んでください」


女は腹と同じように、だらしない口を晒している。

呆けているらしい。


「さよなら。」


そう言って私は女の闇から外に出る。


「は?え?今なにが………?種?え?」


女があたふたとしている横を私は何事もなかったかのように通り過ぎる。


そう、だって何事も起こっていない。


この光ある場所では。


精神世界の外では。


女は何が起こったのか分からないというような、少し不安そうな顔を浮かべてどこかへ行ってしまった。


さて、花は咲くだろうか。


どんな花が、咲くだろうか。


私は抑えきれず緩んでしまう口元に軽く手を添えて、帰路を急いだ。




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