第2話 一つしか食べない

当座の生活を考えては、はーっとため息ついて教科書を開く。もっぱら簿記である。

試験には受からないだろうが、とりあえず手習いをしておく。来る日のために。


私はまたもや弟の気まぐれで定規が盗まれていることに気づき、怒るでもなく淡々と別の本を代わりにしてピーッと線を引いた。表紙に黒い色が残る。

父が「夏ー、夏ー」と呼んでいる。どうせ菓子でも買って欲しいんだろう。

行ってみたらやはり「煙草買って来て。ジュース買ってもいいから」というものだった。

私は然らば千円持って出かけ、煙草と100円サイダーとコーラ、ロールケーキを買って戻り、父に手渡すと「お、これ美味しそうや」と言ってロールケーキを食べだした。

弟にもやってと言うので、三つほど食べられたそれを一旦自分の部屋に持ち帰り、6個あるうちの三つを食べるとは、と思いながら一つだけ食べて後は弟に回した。


当座のことを考える。

こういったどんぶり勘定なところが父の憎むべきところであるし、また好まれるところでもあるのだろう。

無邪気なもんである。


犬を連れて上がると、弟が「すみません、い、犬貸してくれませんが」とうざたらしく来たので、植物の葉っぱを煙草で焼いて遊ぶこいつのやり口を苦々しく思っていた私は、その日はあかん、と言って聞かなかった。

何も返さない癖に寄ってくるところがまた憎たらしい。


私はしばらく犬と遊び、気持ちが十分満足したころ一階に下り、もう一度犬を連れて上がろうとすると僻んだ祖母に犬を取られ、ぶーたれて上がって来た。

母は赤ちゃんの相手をしている。

赤ちゃんは健やかに育っている。おばと従姉妹の子なら大丈夫だろう。一つ心配が取れた。

母がうるさく笛を吹いたのを見咎めながら、私はまた上に上がった。

あの子も音に敏感なのだそう。


アイスを食べながら、これを書いている。

とりあえず精神安定剤はあるし、それは薬と言わず、どこでも寝られる精神に叶うと思う。あとアイスとか?


ふはっと笑ってから、あー猫飼いてーとこたつに座りながら思った。

それかオカメインコ。可愛いではないか。

犬と遊ばせたい。


それが敵わないなならスーファミコンパクトを買いたい。

永遠に遊ぶだろう。きっと永遠に遊ぶさ。

ドラクエやりてー。


しかし当座のことを考えねばなるまいよ。

私ははーっとため息を吐き、またもや教科書を開き、5分経ったぞ、という感じでごろんとごろ寝した。

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