滅私奉公
夏みかん
第1話 はい、はい
朝起きるためにスマホは早く切る。
父を送り出し、街を闊歩して、挨拶して過ごす。
余計な勘ぐり必要なし。ただ、白鳩毛糸店さんには千円文買い物すると言っておこう。
サマーマフラーが編みたい。
黙々と編む作業は好きで、そこに他者はいらない。
ケータイを解約しよう。マイauでそれは簡単にできる。これからはラインだ、ライン。
新しい出会いは期待しない。ただ芯を通すのみ。
植物もすくすく育ち、家を空けた今日帰ったら誰か犬を見てくれた跡があって、大変ありがたく思いながらカップを片付けた。
リスカはもう、やめたほうがいいな。
悲しみはさらなる悲しみを呼ぶ、そんなのわかってる。
私にも私の悲しみがあったけど、所詮それって言い訳だろ。
さぁ外に出よう。無駄足だってわかってる。ただ顔が見たいんだ。
人間顔見なきゃ始まらない。
無謀だけど会いに行くよ、門前払いだけど、それでもいいんだ。
ただ、会いに行くよ。
やっぱり顔見て話したいから。
そこからしか人情は生まれない、そんなのわかってる。
答えは既に出ていたんだ。
ただね、周りが思うより、私は真面目。固いよ。それだけわかっててほしい。堅気の人間なんだ。
生きてるうちが花さ。
明日は婆ちゃんに会いに行こう。
話はそれからだ。
では。
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