叛抗姫の人形

聖 聖冬

Code:M029①

西暦2099年。


この世界は巫山戯ふざけたた常識が蔓延はびこる世界から、真逆の方向に大きく変わった。

自由と言えば聞こえの良い世界だったかもしれない。

だが、それは安心を犠牲にした、誰かが必ず損をする世界。


知らない誰かが知らない誰かの為に傷付き、そして、知っている誰かに殺されるかもしれない、または失望してしまう、聞いているだけで途方に暮れてしまう世界。


制歴100年。


世界各地で同時多発テロが発生し、ロクな対策もしなかった政府の信頼は地に落ちた。

各地で大規模な暴動が巻き起こり、その後も止めとなくテロが相次いだ。


全世界の政府は殆どの機能を失い、戦火に飲み込まれた国は事実上死んだ。

大きな政府は今や小さな政府となる所も増え、国民の安全は、数少ない善良な自警団か、小さな市民団体にしか守られず、自らの命は自らで守らなければならない。


アメリカ、中国、インド、オーストラリア、等々。

そして、かつての産業革命の先駆者で、世界の支配者であったこのイギリスも例外では無い。


政府としての機能を失った国は、莫大な金と人を動員して制府フォーストールガバメントとなり、国内のテロリスト殲滅に力を注いでいる。

テロリスト殲滅に乗り出した制府は、手始めに一般市民の体内にAdministrator chip《アドミニストレータチップ》と言う小型のチップ、通称ASCと呼ばれる機械を埋め込んだ。


ASCを体内に入れた者は、制府に常に健康状態と居場所を監視される。

制府が怪しい人物を調べ、議会が危険人物と判断すれば、体内のASCが起爆して未然にテロを防ぐ。


更に制府は銃の開発と製造を大幅に規制し、テロに使用される武器の大半を押さえた。

現在武器の開発と製造が行われているのは、政府として生きている数少ない国と、厳重な警備が敷かれた、制府の限られた施設内だけ。


先進国は何とか国内のテロを抑えるに至ったが、発展途上国では、もはや制府すら存在が無かった。

そんな中、早急にテロを鎮圧した日本、ロシア、ドイツ、イタリア、フランスは、大規模なな軍拡を行い、テロリストに対する万全の体制を整えた。


西暦2052年、アメリカ制府は国内のテロリストの殲滅に成功し、制府の力を初めて確かなものにした。

それを境に、各地のテロリストは勢いを無くし、徐々に鎮圧されていった。


それを裏付けていたのは、日に日にニュースでテロが発生したと言う報道が、減少していった事だろう。

だが、テロリストも力を蓄え続け、油断していた頃にそれは起こった。


西暦2084年、アメリカ制府が開発、保有していた次世代型核安全兵器、相互転換式弾頭ハンマーヘッドがテロリストの手に渡り、紛争の際に世界中に降り注いだ。

これを侵略と取った政府は手を取り合い、テロリズムに対する思想や行動に、更に対策を固めた。


イギリスと深く親交がある日本は、アメリカと言う傘が無くなると、再び大東亜を纏め上げ、今や帝国時代を思わせる程の軍事力を誇るようになり、海では右に出る国は存在しなくなった。

在日米軍が撤退するまで駐屯していた基地は帝国軍に再利用され、呉や横須賀の軍港では、再び軍艦が製造されている。


海の覇者である日本の軍艦の燃料には、使用済み放射性廃棄物を使用すると言う、最先端技術で注目された、世界で初めての次世代型エネルギーが使われている。

イギリスでは、日本からこの技術を使った軍艦を輸入し、海からのテロリストを、今日までなんとか排除する事に成功している。


イギリスでは、主に国外で活動していたMI6上位のエージェントが召集され、国内に存在するテロリストの対応に当たっている。

だがそれは、天才だけが集まる集団によって大きく歪み、歴史を急激に加速させる事となった。

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