モテる男の心得50
わたなべひとひら
モテる男の『あいうえお』
オレ、
幼い頃から転校が度々あり、友人ができても別れ、出来る隙もなく別れ、気がつけば17歳、お年頃になっていたのだ。健全な高校生男児であれば、もちろん彼女が欲しい。できればかわいくて知的で少しばかり抜けていて、スタイルがよくて小柄で胸もあって美脚な女の子だ、そんなにハードルは高くない。せっかくこの転校生活とおさらばできたのだ、彼女くらいぱぱっとつくって充実した男子高校性ライフ、……男子高校生ライフを送ってやるぜ!
朝食は挽きたてのコーヒーとフルーツサラダ、トーストとチーズで簡単に済ませて、いざ新たなる高校生活にゴーイング☆
「転校してきた七光幸輝くんだ、みんな仲良くしてやってくれな!」
教室内はざわついていた。そしてざわついているのはほぼ女子、これは一気にフラグがたったぞ!
「じゃぁ七光くんはあの空いてる席、
窓際一番後ろ!なんてマンガチックな席なんだ、まさにロマンスが始まる予感だ。
席へと進む間も女子の囁き声が聞こえる。かっこいいー、素敵ー、芸能人みたい、とかね。自分でいうのもあれだが、オレはそれなりに顔がいい。身長も178センチでスタイルがいい。モテないはずがない。
「えっと、美藤さんだよね?はじめましてよろしくね。」
お、よくみたら可愛いな、クラスでも1番じゃないか?こういう相手にはにっこり微笑み爆弾スマイル、これにどきっとしない女子はいない!
「あ、やっぱりあの七光?ひさしぶりー。」
…………ん?
「え、なに覚えてない?ま、あとで話すから、とりあえず座ってホームルーム中でしょ。」
と言われれば黙ってホームルームを聞くしかない。うーむ、美藤さんなんて今まであったことあるっけ?全っ然思い出せない!
「ほら、小学校のとき一緒のクラスだったことあったじゃん、あのときは
は、花山涼香ってあの花山涼香!?モテモテなオレにずけずけと文句を言いきもいうざいと吐き捨てたあの花山涼香か!
「おまっ、あのときは随分いってくれたなー?」
「まぁまぁ落ち着いて、私も親の再婚を機に大人しくなったし、これからは仲良くやりましょうよ。」
そういってポッキーを鞄からだし、油性ペンで『これからよろしくね』と書いて渡してきた。そしてにっこりと笑った。
くっ!やはり思った通りめちゃくちゃかわいい!昔も顔はかわいかったけど皮肉な性格がそれを潰していたような感じだった。この可愛さは本物だ、大人になって万歳!
「あの、七光くん。」
何人かの女子が話しかけてきた。んー、好みじゃないな、端から40点、65点、38点。やはりオレの理想はまだ現れないが、オレはみんなの理想になり得てしまうからな、モテるって辛い。
「七光くんてどこから転校してきたの?」
「彼女とかいる?」
「私もお菓子あるよ、手作り!」
きゃあきゃあとスカートの裾を揺らしながら質問が始まった。これにもオレはスマートに応える。
「前はね、んー…せっかくだからクイズにしようかな。オレが住んでたのは有名なお寺のあるところでー…」
とまぁこんな感じで代表的な質問に答える、それをクイズ形式にすることで一旦ほかの話題を退ける。こうして応えていくことがもっとも効果的であると長い転校生活で学んだのだ。
キーンコーンカーンコーン…
「あっ、予鈴だ!じゃぁまたあとでね七光くん!」
ぱたぱたと走り去る女子を見送り、自分のモテっぷりに心を満たす。ここで心得。
『あ』いさつはきちんと
『い』けめんを鼻にかけない
『う』き足立たず
『え』がおを保ち
『お』いすぎずに駆け引きを
「いけめんって自分で言うのかようざ。」
「なっ!?」
心の声を読まれてる!いや、イケメンを鼻にかけないっていったのになんで笑われないゃダメなんだよ!
「あら七光くんさっそく質問ですか?どうぞ。」
「え!あ、えっと~…なんでもないです。」
隣でくすりと笑う声がする。くそう全然大人しくなってないじゃないか!美藤はノートの端に小さくこう書いてみせた。
『イケメンまでの道のりはまだまだ遠いね』
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