第4話幻覚、幻聴
一ヶ月が経過した。
警察もマスコミも違う政治家の汚職事件で財閥殺しは迷宮入り目前だった。
隼人と美羽の間に小さな命が宿った。
しかし、悪夢はこれからだった。
黒沢がある女を殺して欲しいと頼んできた。
スナックを営んでいる女だった。
菅原財閥にとって迷惑な女なのだ。
菅原は、亡くなる前にその茜という女と結婚していたのだ。
財産の一部は茜に渡る事になっていた。
茜のスナックに隼人は通い始めてびっくりした。
亡くなった隼人の母親に茜はそっくりだった。
スナックは、常連客が多かった。
茜を常に隼人は横に座らせた。
金は黒沢にもらっている。
「いつも、わたしを指名してくれるけど、どうしてかしら?熟女好き?」
「特に理由はないさ。」
「若いのに不思議な人ね。」
茜は、首を傾げて水割りを作ってくれた。
母さんと言ってしまいそうな気持ちを抑えて隼人は酒を飲んでいる。
支配欲が強い父親だった。
母に対しても変わらなかった。
そんな健気な母に何もしてあげられない隼人は苦虫を噛んだように見守るしかなかった。
ある日、父親が大きいスコップを持って自宅に帰って来た。
「父さん、母さんは?」
「出て行った…。」
それだけ言うと父親は自分には目もくれずに酒を飲み始めた。
当時、中学生だった自分には分からなかった。
その後に父親が連れて来た若い女が後妻になった。
後妻は、また母親に似た人間だった。
物静かでおっとりしていた。
隼人は、そんな後妻を無視した。
隼人は、大学生になって家を出る時も何も話さなかった。
「隼人君…。」
それが後妻の口癖だった。
茜と肉体関係になったのは偶然だった。
パトロンに逃げられて茜は荒んでいた。
いつもと同じ時間にスナックを隼人が訪れると茜は一人で酔い潰れていた。
隼人は、茜を介抱して茜の自宅までタクシーで送り届けた。
「隼人!抱いて!全て忘れさせて」と言われて
茜を抱いた後に首を締め上げて絞殺した。
隼人は、涙を流しながら茜の首を締め上げた。
黒沢に電話して後処理を任せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます