没企画)中二の夏はヒーロー稼業の季節!!

多仁寿すもも

1.その名はリスキなんよ

1.鰻濠商店街 


    時は現代、商店街を歩く下校中の少女が二人。

    桂木アサミと阪神ルキノだ。


アサミ「ねぇルキノちゃん、そろそろ中間テストじゃない?」

ルキノ「だね~」

アサミ「けど試験対策してなくてさ」

ルキノ「奇遇だねぇ~私もだよ。じゃ一緒にアサミん家で試験勉強しよっか」

アサミ「え?家で勉強してくの?」

ルキノ「うん、そうと決まったらキム蛸のタコ焼きを買ってこう!」

アサミ「えー!お金ないよぉ……今五百十三円しかない」


    ルキノに電子マネーの残額をみせるアサミ


ルキノ「そっか……じゃあ私がアサミの分もおごっちゃう!」 

アサミ「え?そんな悪いよ」

ルキノ「いいってことよ!ジャ、そこで待っててねぇ~」


   ルキノが、たこ焼きの店へ向かって駆け出していく

   見送るアサミの背後で電気店のTVが報道番組を流していた。


TV番組(OFF)「またしても謎のヒロインがやってくれました。高円寺に現れた機械軍団を瞬く間に蹴散らし――」


   ルキノを待つ間、後ろを振り返り報道番組に見入るアサミ

   TVに黒い女性らしいシルエットが機械を撃退している映像が流れる。


TV番組「かろうじてTVカメラに収めましたが、その姿は何故か記録できません!まさしく正体不明の謎のヒロイン!対する相手も正体不明、目的不明の謎の軍事ロボット――」

アサミ「また、出たんだ。一体どんな子なんだろう?」


   食い入る様に画面を見つめるアサミ


TV番組「――謎の軍事ロボットが日本各地を襲撃する事態が散発的に続いており」


   TVには重火器で一方的に街を破壊する各種軍事ロボットが映っている。

   アサミ、怪訝そうな顔つきで


アサミ「本当に、こんなのが暴れてるのかしら?」   

TV番組「政府は早急な対応を……」

アサミ「んっ?」


   TVに映ったロケット弾の音か?なにかが飛来する音が聞こえる。

   突如、アサミの背後で爆発が起こり、アサミは吹き飛ばされて仕舞う!

   爆風に吹き飛ばされて地面に叩きつけられ二、三度転がるアサミ


男「(駆け寄って)大丈夫かー!うッ、うわぁー機械兵マシンアーミーだ!」


   近くの男が介抱しようとアサミに近寄るが

   地を裂き、空から降りて現れた、突撃銃を構えた人型の機械と

   犬型の機械よって構成された集団に気がつき逃げ出す。

   銃を乱射し、手榴弾を投げ、手当たりしだい破壊する機械兵士

   手近な者に噛み付き、身体から出た刃物で周囲を切り裂く機械犬

   町は阿鼻叫喚の大パニックに!


群衆1「助けて!!機械マシンアーミーが湧いてきたわ!」

群衆2「機械マシンアーミーが攻めてきたぞー!逃げろー!」


   口々に悲鳴を上げながら逃げていく群衆。

   死んだ様に転がる麻美には誰も手を差し伸べない


声「あさみちゃん!麻美ちゃん!」

アサミ「うっ……だっ、誰……な……の?」


   近くから呼びかける声が聞こえ、息も絶え絶えに答えるアサミ


声「こっち、こっちなんよ!スマホからなんよ」

アサミ「で、電話?」


   アサミ必死に手を伸ばし、近くに落ちてたスマホをなんとか拾う

   アサミが覗き込むと見慣れないアプリが起動していた。

   スマホの画面には顔文字のような間の抜けた画像が映っている。


アプリ「僕の名前はrisk kill interface略してリスキなんよ」

アサミ「電話……じゃない?」

リスキ「はいなー僕、アサミちゃんを助けるためにきたんよ」

アサミ「……どう……やって?」

リスキ「スマホから、お助け料五百円もらうんよ」

アサミ「どっ……どういうこと?」

リスキ「僕が力を貸すんよ。今だと初回特典で五百円なんよ」

アサミ「はや……助け……みんなを……」

リスキ「君が助けないと、町の皆やアサミちゃんの友達もあぶないんよ?」

アサミ「助けたい……ルキノちゃんを助けたい!」

リスキ「はいなー!」


    衛星軌道上から放たれた光がアサミを包むと光球となり空高く上昇する。

    光が空中で停止し、爆散すると中からTVの特撮ヒーローのような

    見慣れない武装に包まれた、傷一つない元気なアサミが吼える!


アサミ「うおぉぉぉぉお!鋭気充実!元気百倍!正義爆発よ!」

リスキ「メディカル機能で傷が治ったから当然なんよ。ほめて、ほめてー」


    アサミの左手首にある受信機に得意げなリスキが映る。

    アサミ無視して受信機の画像をスマホのように指で操り

    お財布アプリを起動させ残高を表示させると・・・


アサミ「あー!!もう13円しかないー!!!」 

リスキ「えへへ、さっき契約したんよ。当たり前なんよ」

アサミ「まって!契約……?サインとかしてないじゃん!!」

リスキ「でも皆を助けるには、これが必要なんよ」

アサミ「こんなコスプレ!クーリングオフ!クーリングオフー!!」


    受信機の画像がリスキから矢印に変わる。


リスキ「あ、ほら、そこ!大変!大変!」


    矢印が指す方向へアサミが視線を向けると

    公園の広場へ避難していた集団が機械歩兵に囲まれている!


アサミ「ど、どうしよう!ねぇ、なんとかしてよ!」

リスキ「オマケのミサイルで狙って撃つんよ」

アサミ「え?ど、どうやって」

リスキ「アサミちゃんが対象を見て撃てと合図すれば」


    バイザーに照準らしき円がでて機械歩兵に狙いがつく!


アサミ「いっけぇえええええ!!」

リスキ「ど~ん!僕が自動で撃つんよ」


    アサミの背中から勢い良くミサイルが飛び出し歩兵だけを破壊した!


アサミ「やったあ!」

リスキ「えっへん!ぼくのおかげなんよ」

アサミ「なにいってんのよ!それならアンタが初めから助ければいいんじゃない!!」

リスキ「だーめ、僕ができるのは手助けだけなんよ」

アサミ「ジャあ役立たずの詐欺ハゲアプリじゃない」

リスキ「いじめ、い・じ・め!!!よくない」

アサミ「大体アンタが最初から動けばルキノちゃんとも・・・…あ!」


    ルキノをのこと思い出したアサミ


リスキ「ブーンブーン向こうからスマホの電波がくるんよ」


    リスキが地図を画面に映し出す。近くのビルとビルの隙間にいるようだ。

    アサミが、そのビルへ視線を向けると悲鳴が!


アサミ「ルキノちゃん!」


    アサミが身体を悲鳴が聞こえた場所に向けると自然と加速し空を飛ぶ。


2.ビル上空


リスキ「向こうに熱反応が二つあるんよ」

アサミ「助けなきゃ他に武器は?!」

リスキ「左手の20mm機関砲バルカンが残ってるんよ」


    アサミの左腕に付いた武器らしき機械が頼もしげに煌く


アサミ「なんとかいけそうね」


    アサミが悲鳴が聞こえた場所の上空、ビルとビルの間に到達すると


機械犬「グルルル……」

ルキノ「こっ、こないで……」


    眼下に袋小路に追い詰められたルキノと機械犬の姿が見える。

    アサミは右手で左腕の機関砲バルカンを構えるが……!


リスキ「まって!外れて兆弾したら危ないんよ」 

アサミ「じゃあ外さなければいいじゃない!」


    距離を詰めようとアサミが高度を下げると

    物陰から隙を伺ってた、もう一匹の機械犬Bが飛び出し

    ルキノと睨みあってる機械犬を踏み台にしてアサミに躍りかかる!


アサミ「あっ!」


    機械犬Bの不意打ちによる体当たりはアサミの身体に傷一つ与えなかったが

    自分から相手にぶつかりにいった形になった為、衝撃は凄まじく

    狭いビルの隙間で何度も左右の壁にぶつかりながらアサミは落ちてく……

    リスキのアイコンがピーと涙を流して泣き叫ぶ!


リスキ「びえええん!僕、二匹いるっていったんよー!」


    アサミ、叩きつけられるように落下し地面がクモの素状に少しへこむ


アサミ「まっ……まだまだ……」


    息も絶え絶えに起き上がろうとするアサミ


機械犬A「ガオオォォォンッ!!」


    ルキノと向かい合っていた機械犬Aがアサミを背後から襲う!


アサミ「グッ―」


    背後から機械犬Aの体当たりを喰らい地面に突っ伏すアサミ

    機械犬Aは、そのままアサミを通り過ぎて体を翻しアサミの正面に陣取る。

    上から降りてきた機械犬Bもルキノの眼の前に降り立ち、顎門あぎとを大きく開け放つ!


ルキノ「もっ、駄目ッ……」


    その居並ぶ牙に恐れをなしたか?ルキノはフッと糸が切れるかのように意識を失い

    壁にもたれかかるようにルキノの体が崩れる。

    機械犬Aも今にも飛びかからんと身構えると身体から刃が飛び出す!

    アサミも絶体絶命となった、その瞬間!


少女の声(OFF)「ブラックタイフーン!!」


    黒い疾風がアサミに飛びかかる機械犬を砕き

    更にルキノに襲いかかった機械犬をも撃ち砕く!

    黒い疾風はそのまま上昇し、静止するとアサミと同じような格好の少女となった。

    少女の衣装は黒く、露出した肌も焼いてるのか小麦色だ。

    アサミの衣装と大きく異なる点が一つあり、牛の様な角が頭部に付いている。

    少女はルキノを抱きかかえた姿勢で冷ややかにアサミを見下ろす。


アサミ「私はアサミ!ルキノちゃんを助けてくれてありがとう!」  


    慌てて空を飛んで少女にかけよるアサミ。


少女「アンタ何時からヒロインやってんの?」


    並ぶとアサミより少し背が高い少女は、咎める様な口調で尋ねた。


アサミ「きっ今日だけど……」

少女「この子、気絶してるからいいけどさ、いきなり名乗るのヤバくない?」


    少女はルキノをアサミに渡すと呆れたといわんばかりに肩をすくめる。


アサミ「ごっ、ごめんなさい」

リスキ「アサミちゃんは悪くないんよ。仲良くするんよ」

少女「ちょっ、ウザッ!糞ナビなんか使ってるの?」


    少女、ルキノを抱きかかえているアサミの左手の通信機へ近寄る。


リスキ「いじめ!あっちいって!この子は僕の担当なんよ!! 」

アサミ「え?そのぅ、いきなり襲われちゃって使い方とか」

少女「ほんとウザイよね糞ナビ」

アサミ「ハッ、はぁ……」

リスキ「そういう呼び方は良くない!いじ―」


   少女が下から覗きこみながらタップし、操作するとリスキの音声が途絶える。


少女「これでよしと、こうすれば黙るから」

アサミ「わぁっ、あ、ありがとう」

少女「五月蝿かったろ?」

アサミ「はいっ!」

少女「自己紹介がまだだったね。アタシは見てのとおりのビッチ・ブラック、BBでいいよ」

アサミ「びぃびぃ?」

BB「そっBB、正義の味方が本名を名乗ったら危ないでしょ?敵の正体だってわかんないし」

アサミ「はい……」

BB「アサミちゃんだっけ?なんで(自分の服を指差し)コレ買っちゃったの?」

アサミ「友達と下校中に襲われて……」

BB「巻き込まれちゃったんだね可哀想に(溜息)アサミちゃんさ、向いてなさそうだからやめたほうがいいよ」

アサミ「え、あ、そうですか?や、やめたほうがいいのかな?」

BB「うん、死んだら元も子もないじゃん。両親いるの?」

アサミ「います……けど」

BB「だったら尚更やめときなよ。アンタが死んだら皆が悲しむんでしょ?」

アサミ「うん、BB……さんは、ご両親はいないんですか?」

BB「いないよ、だから死んでも誰も悲しまないんだ」

アサミ「けど兄弟とか友達とか……」

BB「ゴメン、いないったらいない。だから命を賭けて戦ってる」

アサミ「けど、こんな事、一人じゃ危険じゃないですか?」

BB「そうだね、危険だね……じゃ、こんな危険な真似は二度とするんじゃないよ」

アサミ「でもっ!」

BB「(可愛く)私、人助けがしたいんです!っていうのかな?」

アサミ「わからないです……でも一人じゃ危険すぎます!」

BB「変な同情はやめときな!」

アサミ「はい……」


  BB、困ったなという感じで頭を掻きつつ 


BB「アサミちゃん、はっきりいってもいい?」

アサミ「なんですか?」

BB「ここはアタシの縄張りなんだから、邪・魔」 


3。公園


   時刻は夕方、陽が落ちようとしている。

   うなだれ生気のないアサミが地上へ、ゆっくりと降下する。     

   アサミ、公園に人気がないことを確認するとベンチにルキノを横たえる。

   バイザーを上げ右手で、そっと両眼を拭うと深く溜息を一つつく。


アサミ「なんか疲れちゃったな……」


    アサミ、服を脱ごうとして体中を色々と探るがわからない。

    軽く溜息を一つついてからリスキの音声ボリュームを戻す。


アサミ「これ、脱ぎたいんだけど」   

リスキ「待って!着替える前に、楽しい楽しい換金タイムなんよ」

アサミ「かんきんたいむ?」  

リスキ「そっ、倒した敵が鉄屑として買い取ってもらえるんよ」

アサミ「そうなの!?」


    アサミ少し表情が明るくなる。 


リスキ「はいなー!だから頑張って一杯いっーぱい敵を倒すんよ」

アサミ「これから頑張るかはともかく、報酬があるのは嬉しいな」    

リスキ「対価もなしに、こんなことやってたら頭がおかしくなるんよ!」

アサミ「だよね、ヒロインだなんていって、なんかおかしいと思ってた。結局さ金目当ての縄張り……」


    ぶつぶつと文句をいい始めるアサミを余所にリスキが眼をスロットのように回転させ


リスキ「集計開始~兵隊が12体で190円になって……」

アサミ「190円!?」


    余りの安さに驚き、倒れそうになるアサミ


リスキ「初回特典ボーナスで……」

アサミ「ホッ……」


    アサミ、ボーナスという言葉が耳に入り安堵の溜息をもらす。


リスキ「倍になって380円になるんよ」

アサミ「ジュース一本も飲んでないのに……」


    落陽を背にカラスがアホーと一声鳴いた。

    

    つづく

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