第16話


千代は、少しの間仕事を茜に頼むと散歩する感じで大学に向かう。


天気も良いし、暖かな春の風が気持ちいい。。。


「春も近いわね。今年の春も、すずと店長を呼んで三人で、お花見かな」


なんて、お弁当の中身を考えている間に迷涼が、通っている大学に着いてしまう。


約二十分掛かった。


ここまで来て、千代はあることを思い出した。


『今、かすみ大学には行っちゃだめですよ!』


思わず、口をポカーンと開けてしまう。


まぁ、もし会ってもお互い気が付かないだろう、だってもう三年前も前の話しだ。


あの、バカ丸出しな金髪に、ピアス、赤のトレーナーに、目つきの悪い瞳を見つけたら逃げよう。全力で。。。


でも、なんで、別れたんだっけ?


「あ、その前にすずのこと呼び出さないと…とりあえず、食堂に居ることを伝えたら来るかな?」


ートントン


突然、背後から肩を叩かれて千代はスマホで、電話をしながら振り返る。


「ち、千代だよな?」


「な、七倉くん??」


千代の中で、今目の前にいる男に危険信号が鳴り響く。。。


金髪!ピアス!赤のトレーナー!!


彼女は、何も言わずに脱兎の如く逃げ出した。。。


「まっ!ちょっ!!千代!!」


全力疾走で、食堂から逃げ出し人が居ない方へと走る千代。そのあとを、必死に追い掛ける七倉である。


「こっち来ないでくださぁぁぁぁぁあい!!」


「お前が逃げるからだろうがぁぁぁぁぁ!!」


千代は、運動がとても苦手だ。しかし、一つだけ誇れるモノがあったそれは、逃げ足が物凄く早いこと。


「千代!!止まれッ!」


「嫌です!!!」


食堂の廊下から、空いていた窓を飛び越えて、そのままバルコニーに逃げ込む。


「お前、そういう時だけ運動神経いいよなぁぁなっ!!!」


「ありがとうございますぅぅう!!!」


「褒めてねぇぇええええええ」


大声で、話してて周りの生徒、教員たちは首を傾げる。そこに。。。


「何してるの?」


千代の前に、龍夜の弟である右京が現れた。


「右京!ソイツ!つ、つ、捕まえてぇ」


やっべえ。煙草やめようかな…。と内心思いながら、もう限界と片膝を付く。


「この子、捕まえればいいの?」


「ど、どいてくださいいいいい」


千代は、タックルで彼を倒そうとするが意図も簡単に、右京の腕にすっぽりとおさまる。


「つーかまえた♪」


「な、なんで?!タックルしたのに…」


「コレでも俺、体育担当だよ♪」


千代、一生の不覚…。。。


逃げない様に、彼女を担ぎ倒れている七倉の前に、ちょこんと千代を置く。


千代の隣に楽しそうに、腰を下ろす右京。


「右京…お前、空気読んで消えろ」


「折角、捕まえてあげたんだから関係と話しぐらいは聞く資格あると思うけどな~」


彼女は、思わず正座でずっと下を向いたまま黙り込む。


七倉は、いきなり千代を抱き寄せた。


「大胆♪」


右京が、横からチャチャを入れる。。。


「な、なななななななななな七倉くん?!?」


「ずっと…逢いたかった」


「え?」


七倉の方を向くと、彼の瞳は少し潤んでいた。


「逢いたかった…」


「な、ななななな七倉くん!!ば、場所!場所かえよ!?」


野次馬が、集まり始めた。


「せ、生徒さんたち集まってきたから?!」


「大丈夫…あとで、そいつ等根絶やしにするから」


それは、だめ!と、言いかけた瞬間七倉の頭に、痛みが走る。。。


「そして、俺がお前を根絶やしにするわ」


「わぁお!兄さん」


噂の激レア笹木部 龍夜が現れた。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る