メフィスト先生、俺に魔法を教えてください
ノつき
人間という生き物は、どうにも好きになれませんなあ
「旦那様は賭け事がお好きですなあ」
「賭け事が好きなわけではない、お前の悔しがる顔を見るのが好きなのだ」
「何を仰いますか、旦那様と私の賭けでは、私の方が勝ち越しておりますでしょう」
「そうだったか。しかし、大切なのは過去ではなくこれからだろ」
「旦那様が忘れろと仰るのならその通りに致しましょう。まあどのみち、賭けに勝つのは私ですがね。
それにしても、旦那様はあの男が気になりますか」
「なにをとぼけている、気にしているのはお前も同じであろう。
私との賭けがなくともあの男に近づこうとしていたではないか」
「これはこれは、さすがに旦那様には見抜かれていましたか。
真赤に燃えた木の葉が、落ちていくのを見たのです。
我々を惹きつける 何か があるらしいですな。
気になってつい目を向けてしまう」
「人間を嫌うお前にそこまで言わせるとは、やはり面白い男だ。
地上へはいつ向かう」
「すぐにでも向かいましょう。相変わらず、悪魔というものは暇なのでなあ」
「よかろう、お前の好きなようにやって見せるがいい。私はここから見守っている。」
「言われずとも私の好きなようにやってやるつもりでしたよ。なに、退屈させる気はありませんので、安心して見ていておくんなさい」
人々は我先にと銀色に輝く龍の中へと入り込んでいく。
青空の下で龍は、風を裂くようなスピードで地面を這う。
ガタンゴトン ガタンゴトン
誰とも知れない他人の肌と肌が密着しているという状況は、よくよく考えてみるとおかしな後景だ。
人々はこの状況に慣れきってしまっているせいで、誰もこのおかしさに気づかない。
肌を露出した女でさえ、知らないおじさんに肌を密着させたままでいる。
そして皆一様に、首を曲げてスマホをのぞき込み、目的地までの退屈な時間をやり過ごすのだ。
あの男が毎朝高校へ向かう時間は、いつも同じように混んでいる。学校に着く頃には体はもうヘトヘトだ。
慣れない満員電車、慣れない一人暮らし、慣れない高校生活。あの男はどこまで予想して今の未来を選んだのか。
都会の高校に進学するためにわざわざ田舎から引っ越してまで、あの男がやりたいこととは何なのか。
まあ、そんなものがないことは、私はよく知っている。
座席に座っている女子高生が友達と話をしている声が聞こえる。
「みてみて、これ去年の大会の様子」
「南雲(なぐも)先輩?」
「そう!決勝戦で対戦相手を病院送りにしちゃったやつ!超カッコいいよね~」
「それ相手の人大丈夫だったの?」
「すぐ退院してたみたいだけど」
女たちが話しているのは、例の魔法を競い合う大会の話だ。
人間ごときが精霊に力を借りるなど、私は気に食わないのだがね。
現代では魔法はすっかり社会に溶け込んでおり、魔法を使ったスポーツから、仕事としてもその力が使われている。
そのため、魔法使いを育成するための教育機関なども数多く作られた。
ようは魔法と科学の混在する、新しい時代が来たということだ。
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