第2話 二時間目を待ちながら(2)
ある日。二時間目を待ちながら。
マスクをした夏海が、眠たそうな目をしている心春の席にやって来ました。
「なぁ、心春。実はうち大事な物忘れてしもたねん」
「え? 何? 大事な物って」
「ティッシュ」
心春は声が裏返って同じ言葉を言いました。
「ティッシュ?」
夏海はぎこちなく頷きました。
「うん。今、ちょっとティッシュを馬鹿にしたやろ?」
「そんなことないよ! ティッシュは大事だよ! 欲しい時にない! それがティッシュだよね?」
「なんかよく分からへんけど、ティッシュあったら欲しいねん。鼻がムズムズしてな」
「うん、いいよ」
心春は夏海にティッシュを渡しました。
「ありがとう。命の恩人や。……クション!」
「ふぁ~あ~」
心春は欠伸をした後、夏海に尋ねました。
「夏っちゃん、また花粉症?」
「せやねん、この季節はな、鼻が痒くて…… クシャミが止まれへん、クション!!」
「そっか、夏っちゃん花粉症の季節はいつも大変そうだもんね、ふぁ~あ~」
クシャミで身震いする夏海と、眠たくて陽気がぽかぽかする世界にいるような心春との間には季節が一シーズン違う位の温度差がありました。
「私もさっきから欠伸が止まらなくて~」
「欠伸と一緒にせんといて!」
「えへへ~、ごめん。夏っちゃん」
二人が笑うのもつかの間、クシャミと欠伸が襲ってきました。
「クション!」
「ふぁ~あ~」
「クション!」
「ふぁ~あ~。……今の所、互角だね、夏ちゃん」
「互角って、何が?」
「クシャミと欠伸の回数だよ?」
「何の勝負やねん! クション!」
「あぁ! 負けるぅ! 欠伸! 欠伸よ、出ろ~!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。
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