PBW対戦ログ

3月24日

 試合開始。


 対峙するのはそれぞれ赤と青の戦闘用スーツに身を包んだ少女で、お互いに名前は無いようだ。


 赤の発動。

 C-07-L『台風』

 戦闘エリアを台風の目の中に変更する。


 開始早々、戦闘エリアが切り替わった。風吹き荒れる台風のど真ん中。その中心だけは穏やかで、2人が戦えるだけのスペースがある。しかしこの台風は外側に行けば行く程に強風になる為、1度足を取られて風に攫われれば、やがては暴風がその身を割く事になる。いわば死のリングという所だ。


 青の発動。

 A-26-O『暴発』

 対戦相手の能力を全て発動する。


 相手の能力を強制的に発動させる能力。赤は既に『台風』を発動させていた為、残り2つの能力が明らかになる。


 赤の発動。

 H-27-S『ライフゲージ』

 発動者の受ける物理的なダメージを数値に変換し、1000から減らしていく。


 赤の発動。

 A-18-I『斬波刀』

 斬撃を飛ばす事の出来る刀を召喚する。


 『斬波刀』はどの道必要な武器だったので強制的に発動されても赤にとって痛くは無いが、『ライフゲージ』の方はその性質上、ある程度のダメージを負ってからの方が有効活用出来る。つまり温存を阻止したという点で『暴発』の効果はあった。


 青の発動。

 C-21-G『カルキュラット』

 際限なくネズミを召喚する。


 まず1匹目のネズミが生まれる。青は後ろで手を組み、それを隠す。赤は『カルキュラット』の発動を感知し、『斬波刀』を構えた状態で前進する。4秒後、青は2匹目のネズミを召喚し、赤に向かって攻めるように指示を出した。刀を持った相手に近づかれては困る。『台風』によって逃げ場もなく、仕方のない判断だった。


 赤は『斬波刀』を振り下ろし、向かってきたネズミに衝撃波を放った。1匹は直撃して即死したが、2匹目は衝撃によって吹っ飛び、台風の中に飲まれていった。

 だがここで青が気づく。吹っ飛んだ方のネズミは、もう戦闘にこそ復帰出来ないが、まだ息がある。台風の中でぐるぐる回りながらも、懸命に生きようとしている。


 『カルキュラット』は性質上、生存しているネズミの分だけ再発動までの時間が短縮される。最初は4秒かかった召喚も、数が増えるたびにその速度は増して行く。例え戦闘不能でも、ネズミは生きている限り貢献するのだ。風に飲み込まれたネズミもいずれは死ぬ運命にあるが、既に死んでいる訳ではない。


 増えて行くネズミを赤は処理しながら距離を詰めた。何匹かは殺せたが、何匹かは台風の中に行ってしまい、トドメを刺せない。ここに来て『台風』は危険な領域ではなくネズミを一定時間保護する領域に変化してしまった。


 それでもやがて赤は青を捉える事が出来た。周囲には大量のネズミの死体。強風によって血が舞い上がり、赤い霧が2人を覆う。振り下ろした『斬波刀』の1撃により、青は片腕を失った。だがその隙をついて生き残りのネズミが赤に噛みつく。だが『ライフゲージ』に与えられるダメージは些細な物で、赤は無視して青に斬撃を与える。

 しかし赤からすれば、ネズミも処理しなければやがてその大軍に巻き込まれて行く。毎秒増え続け、向かってくるネズミを倒しながらだと、なかなか致命傷は与えられない。


 だが青の出血は増えていく。息も絶え絶え、死もすぐそこかという所で、最後の一手。


 青の発動。

 H-29-V『死線』

 2分間見続けた生物を殺す。


 戦闘開始からちょうど2分が経っていた。


 赤の『ライフゲージ』が0になり、無傷のまま前に倒れた。傷だらけの青の目にはまだ闘志が宿っていた。


 決着。

 青の勝利。



 参加メンター

 青側@Student様

 赤側同上


 感想

 『カルキュラット』で召喚したネズミをなんとかして隠すアイデアは『台風』への対応という形で消化しました。片方がひたすら攻める展開からの逆転に『死線』はとても便利ですね。

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