gray.king_灰の王_

悠桜

❁episode.1

_______________。



僕達の世界は、いつだって灰色で、色なんて無くて。でも"あの日"鮮やかな景色を知った僕達は、灰色では居られなくなって仕舞った。


自由を求め戦う…なんて言って、世界に抗う力すら持ってない癖に。それでも僕達には…それ以外の生き方が分からないから。




♢




無機質な白い土壁の下の、小さな町。どこまでも続く灰色の空と、灰色の土。その中で、少しだけ残る黒ずんだ枯れ木にもたれ掛かり、休んで居る少年が一人。


「ふ…あぁ。」


伸びをした少年は、その視線の先に見慣れた姿を見つけた。


「お早う、サク」


そう言って微笑む少年の頭に、コツン、と冷たい物が当たる。


「おはよ、ユウ。お前の分の朝メシ、持って来た」


そう手渡された小さなマグカップには、いくつか丸いかたまりの入ったスープの様なもの。


「今日もこれだけ」


ぼやく、サクと呼ばれた___少年より少し背の高い彼は


「足りねぇよな。」


そう言ってぶっきらぼうに笑い、同じものを持って少年の隣に座った。


「僕、ちょっとで良いから…サク食べる?」


スープを受け取った少年…ユウは、小さな声で呟く。


「良いんだよ。お前は沢山食って、大きくならないとだろ」


サクは、少し心配した様な、怒った様な様子で返した。


「ってか…お前また外で寝てたのかよ。風邪ひくぞ?」

「いーよ。もう手遅れだし。しかも…空が見えないと、一人は怖いから」

「はぁ?そんなんだからチビなんだよお前。」


彼は呆れた様に続ける。

…そうしていると、遠くに人の影が見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る