自殺島
花夏 綾人
プロローグ
見つけた仕事
昔から、お前は変わり者だと言われたことが何度もある。友達、家族、そして先生にも。
初めこそどうして変なのか分からなかったが、成長すると共に自分でも確かにこれは変わっているなと実感していた。
壁一面に貼られたホラー映画のチラシ、窓際に並べられた、粘土で作られている顔が溶けたような得体の知れない生物。カーテンも部屋の壁も黒く塗り、ランプの形は骸骨というこだわり。
初めてこの部屋に入る者は必ずこう思うだろう。
「なんだこの
と、まことにいい迷惑である。
自分を中二病だと思ったことは一度もない。俺はただオカルト好きなだけだ。
そこが俺は変わり者と言われている理由だ。
オカルトが放つ恐怖の中にある美しさや、悪霊から守ってくれそうな安心感。
いや、むしろこれは悪霊を呼び込んでいるかもしれないが。
とにかく、俺は誰にどう怪しまれようとオカルトを嫌いにはなれないのだ。オカルトは常に新しいネタを提供してくれる。現に、俺は今学習机の上である記事を見ながら考え事をしていた。
A4サイズの紙に書かれていた内容は、
【島民が必ず自殺する島?!不可解な島に我々は密着取材!】
というものだ。
実はこの記事は、これから取材を予定しているという予告なのだが、この予告がされてから半年経ってもその自殺する島での取材結果を載せた記事が出ていない。
このオカルト雑誌は俺の愛用品になっている。過去のものは本棚に綺麗に並べ、一部表紙がぼろぼろになるまで読んだものもある。
過去にもこう言った予告はいくつかあったが、大抵は二週間後にその結果の記事が出ていた。
しかし、この予告された記事だけは未だに出ていない。これにはきっと何かがあるに違いない。俺はそう確信していた。
「......やっぱ実際に行ってみるしかねえよなあ」
乾いた唇を舌で濡らし、早速パソコンで調べ始める。
「自殺島」で検索すれば出るだろうか?
慣れた手つきでキーを叩き、エンターキーを少し強めに音を立てて叩く。
案外あっさり見つかった。
「自殺する原因は不明......。島民は全滅している可能性あり、と」
長年使っているせいか、ゆるくなったマウスのホイールを回して下にスクロールしていた時、一つの文章が目にとまった。
「ん?......自殺島の監視員募集......?!」
細文字で表示されていたので、素早くスクロールすると見逃すところだった。
確かにそこには“自殺島の監視員募集”としっかり表記されている。
少し怪しんだが、気づけばその文字をクリックしていた。
突然背景が真っ暗なページに飛ばされる。
黒の背景に白い文字で、募集要項が表記されている。
【募集人数:一名。監視期間:五日間。給料:日給十万円】
募集人数、よりも監視期間、よりも給料に目を奪われた。一日で十万円ということは、五日間働けば五十万円貰えるということだ。
......これは良い。募集人数が一名なら、早く申し込まないと先を取られてしまうかもしれない。
俺はメールアドレスを入力し、申し込みボタンを押した。
数分後、早速返信が来ていた。
それには思わず驚く。
「速いけど、まあいい。......で、どんな内容が」
【この度はご応募ありがとうございます。監視員として五日間宜しくお願い致します。場所と日時は下記のURLよりご確認ください。それでは】
「......てことはつまり?!よっしゃ、来たぞこれは!」
思わずガッツポーズし、嬉しさに心躍らせながらURLを開く。
場所はここからかなり近い港、日時も明後日からと早かった。
俺は高校生だが親に許可をもらう必要はない。「行ってくる」の一言があれば大丈夫なのだ。恐らく甘やかしてるわけではなく、単に呆れられているのだろう。
また馬鹿なことをするんだ、と。
暗い部屋で、幽夜の不気味な笑い声が響いた。
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