ターミナルにて

第1話 名古屋駅

生まれたのは名古屋市内。

であれば、当然ターミナル駅は名古屋駅か、実家の最寄り駅ということになる。

しかし、思い入れの強い駅は決められない。

中学校に上がるときには引っ越してしまい、小学生までの行動範囲では駅をそれほど使用しないのもあるかもしれない。

しかし、自分の住んでいたところの立地の要素が大きい。

名古屋駅は、今でも迷駅として名高く、JR、名鉄、近鉄の乗り換えが容易ではない。しかも地下鉄の中心駅は、名古屋駅では無く、繁華街の栄である。

また、自分の家から駅までもそれなりに距離が有り、自転車で行くことが多いが、自転車での行動距離の中に、名鉄、地下鉄、JRの駅がそれぞれあった。

つまりは、行き先によって、使う路線も駅もバラバラであったため、思い入れの持つ駅を決められないのである。

しかし、名古屋を離れ、大人になり、実家にも少しは顔を出すようになると、状況は変わった。新幹線で、先ず名古屋駅に着いて乗り換えることが増えた。

乗り換え時に駅のそば屋できしめんを食べ、土産物店で土産を買い、早朝出発時には新幹線口のビジネスホテルを利用したこともある。

これは、自分の故郷に対する感覚なのかも知れない。

そこに居たときには何も感じることができなかったが、離れてはじめて自分の思い入れがあることに気づいた。

そして名古屋駅は常に工事をして、いつも何かしら新しくなっている。

さて、次はいつ名古屋に帰るのか、その時に駅に、どのような新しい発見があるのか、楽しみにしてまた訪れたい。