第3話

 それで、ぼくは精液が枯れ果てるほど性交を行うと、彼女に別れを告げ、再会を約束し、アダルトショップへと移動した。

 人間の女の体を知った今、アダルトショップの商品を買うとどれほどの効果がもたらされるのかを試すためである。

 アダルトショップに行くと、先に牛が来ており、雌牛の裸体の動画DVDを前に購入しようかどうか悩んでいるところであった。牛や豚への飼育が発達した現代では、牛や豚の性的嗜好を満たすことが行われており、牛や豚は好んで美しい造形をした牛や豚の動画を眺めていた。いや、牛や豚なんてみんな同じ顔しているじゃないかと思うかもしれないが、牛や豚にいわせると、雌牛やメス豚にはさまざまな顔があり、スタイルがあり、高度に文明化された現代人には雌牛やメス豚の媚態をきちんと踏まえて、しかるべき動画を提供するのは当然の人類の義務であった。だから、怪物の経営するアダルトショップには牛や豚のアダルトDVDが置いてあったのだが、これはとても高度に文化的営みであるらしい。

 それで、人間の美女動画はというと、人間はこの辺りにはぼくしかいないので需要がなく、一個のアダルトジューサーが置いてあるだけであった。これはぼくがジャズバーに行く前に使った道具であり、一個でさまざまな顔やスタイルの女性を堪能できるという優れものであった。こんなものを使うのはぼくしかいないのだが、怪物たちは殺し合ったり乱交したり蹂躙したりしている。平気で。でも、人工知能がきちんと許される範囲の虐殺と蹂躙で取り締まってるから、怪物たちは滅びたり文明を後退させることはなかった。

 交尾の際に使うさまざまなアダルトグッズを買いに来たのだ。

 催淫剤をとりあえず、五個買うことにした。猟奇趣味はなかったが、拘束具として簡単な手錠を買ってみることにした。犯罪に使われるのかと監視されることになってしまうが、そんなことを恐れていてはアダルトショップの客としては面白くない。目隠しも面白いかもしれないと思って購入することにした。それで、いぶかしい顔をした怪物の店員にこれこれの品を購入することを示すために商品を差し出すと、なんと無視してきた。無言では買わさないつもりらしい。

 しかたなくぼくが、

「これください」

 というと、

「変態ですか。今時、セックスなんて。哺乳類は人工子宮で生まれてくるし、性経験ならもっと楽しい道具がいくらでもあるのに、わざわざ生身の人間とする道具を買うんですか」

 と怪物の店員がいってくる。だったら、おまえはなぜこんなところで店なんて開いているんだよと思ったが声には出さない。

「はい。変態なんです。一度、試してみたくて」

 ぼくが恥ずかしくそう答えると、怪物はいった。

「脳天に電直した方が早いですよ。電極ぶっ刺しましょうか? まさか、電極刺激を知らないんじゃないでしょうね。知らない人がいるとは思わなかった」

「いえ。すいません。催淫剤と手錠と目隠しがほしいんです」

「ふん!」

 店員は最後は怒ったように商品を投げつけてきた。もう全力投球かのようにぶつけてきた。こんなものを買うのは変態の未開人にちがいないというように怪物はぼくが買った商品を投げつけてきた。痛い。心も痛い。

 そして、囚人病院に帰って、女の子と催淫剤で遊んでみた。やっぱり、アダルトジューサーや電極を脳にぶっ刺した方が気持ちよかったが、それはそれでいい思い出になった。

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