最強の傭兵と剣に愛された姫の長い二人旅
澤色北斗
プロローグ① 〜とある戦場で〜
その荒野には無数の剣が刺さっていた。
そしてその荒野には2人の男女しか立っていなかった。
片方は重そうな鎧を着てこれまた重そうな大剣を片手に握った二十代後半ぐらいの男。
もう片方は深紅のドレスを着て二本の細い剣を持つまだ十代半ばぐらいの少女。
この2人は無数の死体や残った武器などが転がる荒野でただ睨み合っていた。
側から見たら突っ込みどころ満載なこの光景だがそんな突っ込みを入れられる者はこの荒野には1人もいなかった。
先に動いたのは重そうな鎧を着た男の方だった。
男は手に持っていた大剣を後ろに投げ捨てた。
男が投げ捨てた剣は派手な音を立てて地面に落ちた。
そんな男の行動に少女は瞳の奥に動揺の色を見せたが首を左右にブンブンとふり両手に持っていた剣を投げ捨てた。
「あぁもうやってられるかこんな戦争!!」
男は両手を大きく広げてその場に仰向けで倒れた。
そんな男の様子を見てなおも動揺……否、呆れ顔で少女はその倒れ込んだ男に歩み寄った。
「確かにそれには同感ですがあなた少々危機感無さすぎですよ!!」
少女のツッコミはもっともでこの荒地には男と少女しかいないとは言え一応今は戦争中というか荒地の惨状を見る限り相当激しい戦いが先ほどまで行われていたみたいだった。
「まぁそんなこと言うなよ姫さん、確かに俺と姫さんでここをこんな惨状にしたけどさまぁぶっちゃけ決着つかなかったじゃん。だからそんな固ぇこと言わずにさ姫さんも横になって上向いてご覧よ。こんなに血生臭い戦場だって言えども空は青いんだぜ。笑えてくるよな」
男は本当に笑っていた。
そんな男を見下ろす少女はついにため息までもこぼした。
「あなたって人はどこまで不真面目なんです?何度も言うようですが一応ここは戦場、そして私とあなたはさっきまで命の取り合いをしていたのに何であなたはそんな呑気にしてられるのですか!!」
少女の声は叫びはその荒地と化した戦場に虚しく響いた。
そんな少女の叫びを聞いた男は上半身だけ起こしその場であぐらをかいた。
「なぜそんな呑気にしてられるかって? んなの決まってんだろ。今この場は戦う意味のない場だからだ。俺は傭兵。金さえ出されれば依頼者の任務に100パーセント答えるのが俺の主義。俺は過度な仕事も100パーセント未満の仕事もする気はない。だから今回のこの場の戦闘はさっきので終わりだ。そして依頼をこなしたのならあとは俺の自由だ。戦おうが帰ろうが俺の自由だ」
男は言葉を続けながら立ち上がり右手の手甲を外し少女の頭の上に手を置いてゆっくりと少女の頭を撫でた。
「それが俺、傭兵レオナード・アインテイルの不変の自分に課したルールだ」
男、レオナードは少女の頭をひとしきり撫でるとそっとその手を頭から離しくるっと少女とは反対の方向に身体を向けた。
「じゃあな姫さん。俺は仕事も終わったしこれで帰るがあんたも帰ったらどうだ?ご両親が待っているんだろ」
レオナードはさっき放り投げた剣を拾い肩に担ぎその場を去ろうとした時後ろからすごい勢いで抱きつかれた。
無論抱きついたのは先ほどまでレオナードと問答をしていた少女だ。
「ねぇ傭兵さん。じゃあ私の依頼を受けて……」
少女は今にも泣き出しそうな声でレオナードの背中に顔を埋めながら頼んだ。
レオナードは少々驚いた顔ををしたがすぐまた先ほどまでの陽気な顔に戻り
「額と内容次第だな」
とそう答えた。
その答えに少女は埋めていた顔を上げレオナードの顔を真っ直ぐ見つめ
「そうね額は私の全てそれで依頼内容は……」
少女は少し間を置き誰もが見惚れるような笑みをレオナードに見せ
「私と死んで」
と一言そう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます