第118話 杞憂と心配 その2
「……とにかく、テンペスまで行こう。それから、船でシコラスが住んでいる孤島に向かう……それでいいな?」
「ああ……テンペスまでは遠いのか?」
エルナが不安そうに訊ねる。
そういえば……ウルスラの奴は特にここからテンペスまでの距離とかは言及していなかったな。
「……まぁ、あまり急ぐ必要はないだろう。シコラスはどうせあの孤島からいなくならないだろうしな」
「そ、そうか……」
エルナはなぜか意外そうな顔で俺を見る。
「……なんだ? 変なこと言ったか?」
「いや……ちょっと前のお前なら、さっさと行こうって言うと思ったからな」
エルナは少し恥ずかしそうにそう言う。すると、なぜかリゼが嬉しそうに小さく微笑んだ。
「……なんだ? 何かおかしいか?」
「あ……ごめんなさい。ただ……」
「ただ……?」
すると、リゼは嬉しそうに俺とエルナを見る。
「……また三人一緒なんだな、って思うと、嬉しくて……」
リゼがそう言うと思わず俺とエルナは顔を見合わせてしまった。
「……姫様。勿体無い言葉です」
「え? そうですか? ……じゃあ、行きましょう」
リゼの言葉を合図に、俺たちはテンペスへの道を歩みだした。
一応、帝国内の地理はエルナが把握しているので、とりあえず海岸側に向かって歩くことにした。
特に面倒事もなく、俺とエルナ、そして、リゼは順調に歩みを進めていった。
ロッタの家を出てから、二日間程歩いた日の夜だった。
「この分だと、明日の朝くらいには、テンペス……というより、海岸の方に出るな」
エルナがそう言った。俺とリゼは小さく頷く。
「……しかし、魔女が住んでいるとかいう島には船で行くわけか……乗せてくれる船があればいいが……お前は前はどうやって島に渡ったんだ?」
エルナが不思議そうに俺に訊ねてくる。
そういえば……たしかに運良く俺は船に乗せてもらえた。
どんなやつだったかはよく覚えてないが……考えてみれば不思議な話だ。金も払った記憶もない。
「……よく、覚えてない」
「何? なんだそれは……お前は島に行ったんだろう?」
「……ああ。だから、どうやって行ったかは覚えている。でも、船を出してくれた奴のことはよく覚えてないんだ」
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