第39話 奇怪な追跡者 その5

「そう。どうにもお師匠様は僕に魔人形の制作方法を教えてくれなかったんだ……まぁ、あの人は国とかそういう機関が嫌いだからね。僕みたいな、軍属の魔女は嫌いだったんだろうね」


「魔女? お前、魔女なのか?」


「うん。そうだよ。巷に居る魔女なんてのは大体が偽物さ。でも、僕は本物の魔女。だからこその称号としての『マイスター』だ」


 マイスター……なるほど。そういう意味でつかわれているってわけか。コイツが魔女ということは分かったが、軍属ということがひっかかる。


 俺はエルナの方に顔を向ける。エルナは、気まずそうな顔で俺を見返していた。


「で、コイツは知り合いなんだな?」


「……ああ。帝国第九研究機関の研究者だ」


「研究者……コイツの研究はなんだ?」


「……さぁ?」


「さぁ? なんだそりゃ」


「……私も知らないんだ。それに、何度か場内ですれ違っただけで、知り合いというほどでは……」


 エルナの反応を見るに、嘘をついているようには見えなかった。俺はもう一度ウルスラの方に顔をやる。


「で、お前、何を研究してたんだ?」


「そりゃあ、決まっているじゃないか。魔人形の生成だよ」


「なるほど……で、そんなお前が何の用だ? まさかとは思うが、この俺が人形にしたリゼが珍しいってんじゃないだろうな?」


 俺がそういうとウルスラはキョトンとした顔で俺を見る。そして、しばらくしてから、小さく肩を揺らしながら笑っていた。


「ははっ……面白い事を言うね。君、さすがマイスターだ」


「はぁ? いや、だから、俺はマイスターじゃ……」


「言わなくていいよ。いいかい? この国での魔人形生成の成功事例第一号は……そこにいるリゼ様なんだよ!」

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