第38話 奇怪な追跡者 その4

 エルナがそう言うと、俺達の間に沈黙が襲った。俺も、リゼも、ウルスラも何も言わずただ、エルナが言った言葉だけが妙に間延びしていた。


「……ふふ。ようやく、わかったみたいだね」


 ウルスラはそう言って嬉しそうにほほ笑んだ。二つの魂……なんとなく、ウルスラの言っている事の意味……つまり、人間だった、という言葉の意味が、俺にわかる気がした。


「なるほど……お前、その身体……」


「うん、そう。この身体は僕だけの身体じゃない。僕の妹の身体でもあるのさ」


 特にためらうこともなく、ウルスラは簡単にそう言ってのけた。妹の体という言葉に俺は何も言わずただ、ウルスラを見ていた。


「なんだ。驚かないんだね」


「まぁ、何となくお前のやったことはわかるしな」


「ああ、そうか。そうだよ。僕はね、実の妹の体を実験材料にしたんだ。僕達は双子だったんだよ。見た目は似てたけど、性格はとにかく似ていなくてね。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。とにかく、僕は、僕自身の知的好奇心から、実の妹を実験材料にして、結果として僕自身の魂を入れるための人形にしたんだよ」


「ふぅん。で、成功したってわけか」


「そう。この身体には僕と妹の二つの魂が入っている。一つの体に二つの魂に入った人形ってわけさ。だから、片方の魂が死ぬたびにもう片方が入れ替わってこの肉の器を機動させる。だから、死ぬこともない……いや。僕も正確にはこの身体の仕組みなんてよくわかっていないんだけどね」


 なぜか可笑しそうにウルスラは俺達に笑って見せたが、当然俺達は笑うことが出来なかった。


「……でもねぇ、この身体は失敗作さ。というか、失敗続きの果ての苦肉の策ってところだったんだ。君と同じことをしようとしてね」


「同じ事……魔人形作りか?」


 ウルスラはゆっくりと、嬉しそうに頷いた。


 それを見て、なんとなくだが、俺はウルスラが何をしたいのか、理解できたのだった。

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