第2章 償いの旅へ

第26話 旅の始まり その1

 村の者は結局最後まで俺を見送ることなく、俺とリザ、そしてエルナの三人は村を出た。


 此の俺の故郷の村からシコラスが暮らす孤島まではざっと見積もっても約三カ月はかかる。その間この人形とその従者と一緒にすごさなければいけないと考えると、早くも気が重い。


「おい、ロスペル」


 俺がそんなことを考えていると、エルナが鋭い目つきで俺に声をかけてきた。


「なんだ、いきなり呼びつけて」


「お前、正しく私達を案内するつもり、あるんだろうな?」


「……は?」


 立ち止まって俺は後からやってくる二人の方を見る。


「え、エルナ……いきなり何を言い出すのです」


「姫様。コイツは姫様を人形にした奴です。信用しすぎるのは危険かと」


 戸惑うリザに対し、あくまでエルナは警戒の姿勢を崩さない。俺はわざとらしくため息をついた。


「なんだ。何かおかしいか?」


「いや……あのなぁ、俺はもう生きる目標を失ったんだぜ? これ以上何も望まないし、今ここで死んでも正直構わない……そんな俺が案内するって言っているんだ。むしろ感謝して信用してほしいんだが」


 エルナはそれでも俺のことを信用していないようだった。別にこんな目つきの悪い愛想のない女にどう思われても構わないが、気分は良くなかった。


「エルナ、いい加減にしなさい。ロスペル様は辛い心境の中でも私達を案内しようとしてくださるのです。謝りなさい」


「謝る? 姫様。いくら姫様のお言葉でも、そのようなことは……」


「謝りなさい、命令ですよ」


 ムッとした表情でリザがそういうと、さすがのエルナも主君には逆らえないようである。俺の前に進み出ると小さく頭を下げた。


「……すまなかった。今のは忘れてくれ」


「別に。謝らなくてもいいさ。まぁ、案内はするけどな」


 俺はそう言って再び歩き出す。そして、しばらくした後で、チラ後ろから付いてくる二人を見てみる。


 人形のリザはともかく、黒装束に鋭い目つき……どう見てもまともな人間じゃないエルナだが……一体全体、こいつらはどういう関係なのだろうか。

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