― 同化 ―

紅子

序章

眠りに落ちる一瞬前。私は上澄みの意識を保ったまま何処かへ行く。

季節も時間も場所もバラバラ。

しかし確かにそこにいる。確かに誰かの中に私は居る。

温度、匂い、感触、音、味覚、そしてその感情さえ共有する。

否、そう感じているのは私だけなのか?

私が憑依した人物は私を感じているのか?

自身の中の異物、もう一つの自我に気付いているだろうか?


たぶん愚問だ。

私はあなただ。

喜びも悲しみも怒りも、孤独も残忍さも卑下も寂しさも虚しさも共有する。

私は。

あなただ。


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