負け犬高校生共の旅同好会活動記録
春の土筆
第1話 出会って話してバカやってる。
四月の入学シーズン、周りは中学校入学やら高校入学やらとにかく入学していた、俺、
そんな九十九大地の物語は入学式終わりの挨拶と同時に始まりを迎える―
式が終わると俺はすぐに後ろの少し身長の高い男子に話しかける。
「君どこの中学校?」
そう、友達作りだ、俺は自慢じゃないがコミュ力は高い方だと思う、人前で話すのは得意ではないがコミュ力は高い、そこは自負している、するとそいつは答えた。
「俺は北中だよ、そういうお前は?」
「俺は豊緑中、卒業してから引っ越してきたからあんまり聞き覚えないだろ?俺もこっち来て日が浅いからこの辺の中学とか全然知らないんだよね」
「なんだよ、じゃあなんで聞いたんだよ」
そいつは笑いながら言う、フレンドリーな様子でこっちも少し安心した。
「ごめんごめん、話すきっかけが欲しかったんだよ、そういえば名前は?俺は九十九大地!明るく楽しい太陽みたいな人間さ!」
「そんなこと自分で言うのね、もはや清々しさすら感じるよ!俺は
手を差し出す鹿沼健人、俺も手を差し出し握手をする。
「よろしくな!俺の高校生活友達第一号!そういえばこの後ってどうするんだっけ?」
「確か各々のクラスに行くんだった気がするよ?」
入学式前に配られたプリントを取り出しながら言う。
「そっか、俺は二組だけどお前は?」
「おぉ!俺も二組だよ!これはなんだかもう運命感じるね!」
目をキラキラさせながら言う鹿沼。
「いや、男に運命感じられても全く嬉しくないんだけど」
「そっか、それもそうだね、まぁ、とりあえず行こうか」
やめて!なんだかそんな寂しそうな目をしないで!こっちが悲しい!!
頭でそう叫びながら二人で目的の教室まで向かう。
ーホームルームにてー
クラスのみんなが席に着き先生が教卓に立つ、
「おぃーっす、今日からお前らの担任の
(随分適当な先生だな、おい)
先生に言われた通り端から順番に自己紹介をしていく。
(あぁ、正直言って苦手なんだよね、変なところあがり症だから1体1とか何人かで話すのなら全然饒舌なんだけどどうしても人前ってのは苦手だ~)
とても何分か前にコミュ力高いとか言ってた人間の台詞ではない。
(てかさ何故この世に自己紹介なんてものがあるの?自己紹介の存在意義ってなんなの?そもそも自己紹介をすることによって俺に対するメリットとはなんなのかな?しかもさ―以下略)
「おーい、おーい!聞こえないのか?お前だぞー!早くしてくれー!」
(あー、先生が何かを言っている、俺の番来たのか~、そっか、来ちゃったのか~、はっ!俺の番!?)
もはややる前からこれじゃあがり症どころじゃない。
(ま、まぁ俺にかかれば自己紹介なんて冷静沈着にできるし?落ち着け、俺よ落ち着け)
「俺は九十九大地、豊緑中出身、趣味はゲーム、特に―」
(よし!ここまでは完璧!なんだ余裕じゃないっすかぁ、)
「これから一年よろしくおねがいしゅましゅ!」
(噛んだ〜、めっちゃ噛んだ〜、やらかしたー!やめてー!みんな俺を見ないでー!笑わないでー!)
「はいー、次ー!」
「僕は
(こいつも噛んだー!!うん!自己紹介で噛むのは自分だけじゃない!そうよ!何もおかしいことなんてなかったんや!)
「次また後ろ行ってお前ー」
「
(お前もかー!もういいよ!二人目はわかる!わかるけど三人目はもういいよー!)
そんなこんなで慌ただしい(俺だけ)自己紹介が終わり、これからしばらくの予定を先生から説明を受けて一日目の予定は終了する。
「終わったー!さて帰りましょうかね!」
「おい、九十九ー!」
帰りの支度を済まし、席を立つと後ろから名前を呼ばれる。
「えーっと…名前なんだっけ?」
「鹿沼ね、鹿沼健人だよ」
あ、そうだ入学式の時の…
「そうそう鹿沼だ、んでなに?」
「お前電車で帰るの?」
「そうだけど、」
「俺自転車だけど駅までは方向一緒だし一緒に行こうぜ」
「まじで?行く行く!」
高校生活初めての友達との帰宅。
これぞ青春!と心の中で舞い上がりながら校門を出る。
「なぁ、なんか親しみやすくするのにあだ名つけようぜ」
俺はふと言った、中学時代の経験からあだ名があった方が仲良くなれると知っていたからだ。
「あだ名か、あんまり付けられたことないけど、やっぱりそういうのってあった方が親しみやすいのかな?」
鹿沼は言う。
「俺は中学時代周りみんなあだ名使ってたぜ?」
「へぇ…ちょっと憧れるかも!なんかいいの付けてみて!」
こいつも青春に憧れを抱く同士か……いいね!
「まかせなさい!えーっとねぇ、沼田だろ…」
「鹿沼だよ。」
「あ、ごめん、わざとだわ」
「わざとかよ!」
「鹿沼だろぉ?鹿沼…鹿沼…鹿…鹿肉…らむ……?」
「・・・」
うん、流石に今のは冗談、できればラム肉は子羊だよ!とかツッコミが欲しかったんだけどな……
「な、なんだよ…」
数秒経った後鹿沼は口を開く。
「かなりいいやん…お前あだ名付けの天才かよ」
(えー!気に入っちゃったよ!?絶対嫌がられるかと思ったのに!?コイツのセンス半端ないどころか壊滅的だよ!)
「お、おうサンキュー、気に入って貰えたようで何よりだよ」
半ば呆れ気味で答える俺。
「俺もお前にあだ名つけてやるよ」
「お?まじで?かっこいいの頼むよ」
え、怖い怖い、こいつのセンスであだ名とかマジ怖い!!
「うーんとねぇ……思いつかないからもう『つくも』でいいよ」
やっぱりか!!数秒も考えてねえよ!!
「それ平仮名にしただけだよね!これ読んでる人にしか分からないからね!?」
「そういういきなりのメタ発言やめてもらえます?」
「あ、はい、さ、サーセン……」
「分かったならよろしい」
そうこうしてるうちにいつの間にか駅に着き、電車の時間も近づいていた。
「あ、もう着いたね、んじゃまた明日!これからよろしくな!」
「おう!よろしく!明日土曜日で休みだから月曜日な!」
「あ、そうだね、そうだった!自転車気をつけて帰れよ!」
「おう!んじゃ!」
在り来りな間違いをし、在り来りな別れの挨拶をして駅に入る。
後ろで自転車が倒れる音と「うわ!」っという声と車の急ブレーキの音が聞こえるが気のせいだろう。
こうして無事に高校生活1日目を終え、これから同好会を作り、個性的なメンバー達と一緒に学校生活を送ることになるけれどそれはまたのお楽しみに…
(あれ?結局俺のあだ名あのまま『つくも』なの?)
負け犬高校生共の旅同好会活動記録 春の土筆 @tukusigngn
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