第1話

グレー色に染まった空。

黒い雨粒が降ってきた。

独りの自分、この世界で独りきり。たった独り。

俺は真っ暗な闇を歩む。ただただ、真っ直ぐと真っ直ぐと。

すると、光が刺したんだ。

淡くて小さな光。

俺は彼女に出会った。それはきっと運命。そう、運命だった。

そう、俺は一人感じたんだ。



「ん。…さん。相川さん!!」

ふと、目を覚ます。



声がする方を見ると、後輩の加藤が立っていた。

「お昼ですけど、相川さんはどうしますか。」

時計を見ると、12時を過ぎている。

あぁ。お昼だから一応声を掛けたということか。

思わず心の中で笑みをこぼす。

「私は遠慮としておくよ。」

そう伝えると後輩は去っていった。

去り際に聞こえた言葉。あっちは聞こえていないと思っているのだろうか。それとも、わざとだろうか。

『またですか。』

入社した時から上司たちから声を掛けられてきたが、全て断ってきた。何故断ってきたか。

そんなのは簡単だ。単純に行きたいと思わないからだ。

昔から人付き合いが苦手だった。だから今まで友だちといえる人も少ない。だが、それに不満はない。

私には友だちという存在が必要ないだけなのだ。

そんなこともあり、会社でのイメージも良くない。

だが、仕事は出来る方だ。だから色々と聞いてくる人も多い。

私にとっては迷惑極まりない。

人と喋るという行為事態が嫌いな自分にとって、教えるというのはどの仕事よりも疲れる。

そう、プレゼンテーションよりもだ。

仕事で割りきれるものはいい。

だが、誰かに教えるというのはやはり割りきれない。

この会社に入ってしまったのだから仕方ない。

おっと、こんなことをしていたら昼食の時間がなくなってしまう。

私は鞄から弁当を取りだし、デスクを離れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る