家族 4
外はあいにくの曇り空。
思い返せば、漆黒の翼を埋め込まれてから晴れた空なんて見た記憶が一度もない。
・・・・ん?そういえば土の国ではどうだったんだったっけ?
あの国では青空が広がっていたのだろうか。
覚えてないな。
数年前まで住んでいた場所。
何も変わってない。
この土地はまだ討伐制度が介入されていないから、道を歩く人も他の街に比べてギスギスした感じがない。
元自宅へと歩く。
あの人たちは今どうしているんだろ?
政府の犬として使われていた僕が、ある日突然反逆者へ。
家族にも何らかのペナルティがあったに違いない。
どんな扱いを受けているのだろうか。
・・・・まぁどうでも良いんだけど。
気になるのは兄の事。
1人では生きていけない兄。
一番最初に犠牲になるのは兄で、一番生きづらい生活をしているのも兄なはず。
今まで助けてあげられなくてごめんって気持ちと、早く楽にしてあげないという気持ち。
色んな事を考えたけど、結局この方法しかなかった。
涼が家族を殺したと聞いた時思わず殴ってしまったのに、結局は僕も同じ事をしようとしてるんだから皮肉な物だ。
僕が家族を殺したなんて話を聞いたら、涼は発狂するだろうな。
そんな事を考えていると元自宅へたどり着いた。
以前住んでいた家を見上げると、あまりの変貌っぷりに僕は思わず絶句した。
窓という窓は全て割られ、壁には無数の穴が空いている。
庭は手入れされる事もなく、雑草が生え放題。
とても人が住んでいるようには見えない。
間違いなく家族は住んでいないだろう。
そう分かってはいたけど、恐る恐る中へと進む。
室内の壁もボロボロに穴があき、カーテンは破かれ割れた食器が散乱している。
眞鍋の手下が押しかけてきたのだろうか・・・・・?
だとしたら、もう両親は殺されている?
室内は荒れていたけど、血痕は一切見当たらない。
という事は家族揃って逃げ切れたのだろうか。
いや・・・・・・まさか・・・・・・・・・・。
とても嫌な予感がした。
恐らく両親は逃げたのだと思う。
殺されたような跡がどこにもないから。
じゃあ兄は?
1人では生きていけない兄を、あの両親が連れて逃げたとは考えにくい。
きっと兄の事は置いていったに違いない。
その後、眞鍋の手下がこの家に押しかけてきた。
じゃあ兄は・・・・・・・・・?
兄が幽閉されている部屋の前にたどり着く。
分厚い鉄の扉。
傷つけられた跡は見えるが、こじ開けられた形跡はない。
・・・・・と言うことは?
久しぶりに漆黒の翼を起動する。
生身の人間の力じゃ、この扉を破壊する事は出来ないから。
数回扉を殴ると粉々に砕けた。
砂煙が舞うと同時に室内の臭いがこちらに流れ込んでくる。
鼻をつく臭い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます