家族 3
翌日。
涼はいつも通り討伐へと向かった。
あんな意味のない討伐なんて、やればやるだけ自分の身を老化させるだけなのに。
彼は気づいていない。
「さあ行きましょう。
3泊4日滞在出来るよう手配しました。
しばらくご家族とは会えなくなりますから、久しぶりに羽を伸ばしてゆっくりしてきて下さい」
早見さんと二人で車に乗り込む。
車内では無言。
運転手はこちら側の人間ではなく、女王に雇われた人間。
僕と早見さんは僕の故郷である地域へ討伐しに行くと眞鍋さんに話を通したらしい。
返答は
「頑張って」
眞鍋さんにとって、人さえ殺せれば僕たちがどこへ行こうがどうでも良いらしい。
これは爪が甘いのか、早見さんを信用しきっている証という事なのか。
3泊4日かー・・・・・・。
そんなにたっぷり時間をとらなくても良かったのに。
僕の用事はすぐ終わるよ。
車はまっすぐ滞在するホテルへ到着。
荷物を下ろし室内の監視カメラ・盗聴器の有無をチェックする。
「・・・・・ないみたいですね。
一応僕反逆者っていう位置づけなはずなのに、眞鍋さんはどうしてこんなに放置するんでしょうかね」
笑いながらそう話すと
「放置する・・・・というより、手がまわらないのでしょう。
現在の国の内部事情はハヤトさんが思っている以上に大変な事になっていますから」
早見さんがニタリと笑う。
その表情からこちら側の作戦がうまくいっている様子が伺わえる。
「今日は特に何もやる事はありませんから、家に帰っても良いですよ。
私は適当に時間を潰していますから」
そう言うと、僕の手錠を外す。
「え?僕を1人で外出させても大丈夫なんですか?」
一応設定的に僕と早見さんは、反逆者と監視員。
反逆者が1人で出歩いている所を誰かに見られでもしたら・・・・・。
「あぁ大丈夫ですよ。今この土地には私とハヤトさんしか居ません。
それにこちらの土地には私たち以外誰も来ませんから」
えっ・・・・。
「眞鍋さんへはハヤトさんの故郷で討伐をすると伝えましたが、書類を提出する際には別の土地へ討伐へ向かった事にしました。
元々私たちは少数で動いていましたし、誰も私たちが消えた所で探す人間なんていませんよ」
それもそうか。
僕たちは係員と呼ばれる早見さんと車の運転手くらいしか周りに居なかったんだったっけ。
「一応運転手には僕たちをここまで送ってもらったので、僕たちがここにいる事を知っている。
夜中に一度戻ります。
というか、実家に戻っても用事なんてすぐに終わりますから」
すぐ終わる。
全てを終わらせるんだ。
「・・・・そうですか・・・・・。
家族を・・・・・・・・殺すんですか?」
口元は笑っているのに、目は笑っていない。
早見さんはいつも不思議な表情をする。
「よくわかりましたね。
僕がこの土地に来た理由は家族の討伐です。
・・・・・・・軽蔑しますか?」
「いいえ。いってらっしゃい、ハヤトさん」
・・・・不思議な人だ。
訳がわからない。
家族を殺すと言っても止めようともしない。
軽蔑しようともせず、表情も変えない。
早見さんにとって僕は、涼と立場は違えどやはりただのゴミでしかないんだろうな。
涼と違うのは、早見さんにとって 使える か 使えない かどうかだけ。
恐ろしい男だ。
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