仮面に隠された本当の顔 9



目を開くと、真っ白い天井に大量の点滴が見えた。

ここは・・・・・・・・病室?

この光景前もどこかで見たような・・・・。


あの時と違うのは、身体を起こす事は出来ないけど、指を動かすことは出来た。

頭も少しだけ動く。


ゆっくり点滴がぶら下がっている方へ頭を動かす。

大量の点滴の後ろに、椅子に座り画用紙に何かを描いている女性の姿が見えた。

顔にペイントをし民族衣装を着た女。

あれ?こんな人、この国に存在していたっけ?

しばらく女性を眺めていると、女も僕の視線に気づいたのか、目があった。



「あら、目が覚めた?ハヤト君」


僕の名前を知っている?誰だったっけー・・・・・・。

あ!思い出した!

さっき会った時代錯誤の槍を持った女だ!

ん?僕はこいつに名乗ったっけ?



「えっと・・・何で名前を・・・・」


と聞こうとした瞬間。

女は持っていた画用紙で僕の身体を殴り始めた。



「アンタってさ・・・・・失礼な奴ね。

嘘はついてなかったみたいだけど、私とこの国のことを単純とか馬鹿とか思いっきり見下しやがって!!!」



「い・・・いたた・・・・その・・・・何でそれを・・・・」


口には出していなかったのに、何故知ってる?!



「この国の事を散々馬鹿にしてくれたけど、単純で見る目がないのはアンタ達の方なんだから!!!」



チラっと画用紙が見えた。

描かれていたのは・・・・・・・僕?



「文明が止まってるんじゃないの!止めたように見せかけてるの!

それにアンタはまんまと引っかかったんだからね!!!馬鹿はアンタ!!!

いい?わかった?謝りなさいよ!!!」



「ごめんなさい。すみませんでした」



何がなんだかわからない。

とりあえず謝って女を落ち着かせよう。


謝った事で気が済んだのか?女は肩で大きく呼吸をしながら


「ふー、わかればいいのよ。全くもう・・・・」


ゆっくり先ほど座っていた椅子にもう一度腰をかけ、

また手にペンを取ると、画用紙に何かを描き始める。



「・・・・・で、何で僕の名前を知ってるんですか?言いましたっけ・・・」



「あぁ、記憶を見たの。そこで皆が貴方の事を ハヤト って呼んでたから。

ハヤト君っていう名前で当たってるのよね?」



・・・・・・・なんだろう。

色々ぶっ飛んでる。

どこから突っ込んでいいのか。




「まぁあれよね。固定概念って奴。

他国の人間はこの国について深く知ろうともしないで、この服装や槍を持った姿を見てみんな馬鹿にしてる。

文明に取り残された奴らだ ってね。

だから密入してくる輩が後を絶たなくて。

本当に困って逃げてくる人達もいるわよ。でもそうじゃない奴らもいるから」



早見さん達と同じ考えの人達が他にもたくさんいるんだ。

という事は僕たちが知らないだけで他国でも色んな事が起こっているという事なのか?

逃げ場所を求めて皆土の国へやってくる。



「だから密入してきた奴らは全員あの部屋に一度通し、強制的に眠らせたあと、

頭に穴を開けてプラグをつなげるの。

そのプラグは特殊でね、そいつの記憶や考えている事が全て映像として見ることが出来るのよ。

凄いでしょ?

これにより、そいつが言っている事が嘘か本当かがわかる」



え?いきなり衝撃的な発言。



「・・・という事は今僕は頭に穴を開けた状態って事ですか?」


「そうよ。じゃないと貴方の記憶が見れないじゃない」


「・・・・・」



絶句。

何がこの国の人間は純粋だよ。

初対面の人間に許可なしで頭に勝手に穴を開けるなんて真っ黒じゃないか!!!



「大丈夫よ。ちゃんと私生活に支障がないよう塞いでおいたから。

傷口が完全に閉じるまではしっかり面倒みてるし。嘘をついてない人限定でね」


「嘘をついてる人は・・・・・いやなんでもない」


聞かなくてもなんとなくどうなるか想像が出来た。

この国の人間は、思っていた以上に単純でも何でもないようだな。




女はペンを止めるとその場で大きく伸びた。



「でもさ、仕方がないと思わない?

この国は 利用される為 に誰に対しても優しく手を差し伸べている訳じゃないのよ。

ただ平和に皆がニコニコ暮らせるようにと願って、困っている人にも手を差し伸べてるのにさ。

そこにつけこんで嘘をついて利用する輩が居るんだもん。

人間不信になって頭に勝手に穴を開けちゃっても仕方がないと思うけどな」



土の国が目指す幸せの形と、水の国が打ち立てた平和の形とは大きく違った。

最後の一行がとても恐ろしく感じるけど、そんな結論にたどり着いてしまう程の出来事があった・・・・・と推理しようか。



「それにしても貴方って怖い人だったのね。表面的には爽やかな笑顔を振りまいてるのに、

性格はカスじゃない。

ん~まぁ、家族関係を見たら仕方がないのかな?っていう感じ」



家族の記憶まで見たのか。

なら兄の存在も彼女は知っている。

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